講演情報
[IO-11]骨細胞ネットワーク再構築と骨質に着目した移植骨および周辺骨組織の変化を観察する
*ニラー トウン1、長澤 麻沙子1、張 桐桐1、魚島 勝美1 (1. 新潟大学大学院医歯学総合研究科・生体歯科補綴学分野)
【目的】
骨細胞ネットワークは骨量と骨質を維持するための機械知覚と骨リモデリングに極めて重要である1).骨リモデリングにおける骨細胞の役割はよく知られているが,骨移植に最適な条件,特に骨細胞ネットワークと骨質の関係についてはよくわかっていない.本研究の目的は宿主と移植骨の骨質を様々に変化させた条件下で骨細胞のlacuno-canalicular network(LCN)の動態を調べることである.
【方法】
4週齢雄性SDラットを対照群と試験群に分けた.試験群にはコラーゲンの架橋を阻害するため,飲料水に0.2%β-アミノプロピオニトリル(BAPN)を4週間投与し,骨質不良モデルを作成した.両群をさらにドナーとレシピエントに分け,4つの実験群を作成した: NN(正常宿主/正常移植骨),NB(正常宿主/BAPN移植骨),BN(BAPN宿主/正常移植骨),BB(BAPN宿主/BAPN移植骨).移植骨はドナーの頭蓋骨から採取し,レシピエントに移植した.移植後1,2,4週目にサンプルを採取し,組織学的、組織形態学的分析を行った.また凍結切片標本を作製し,ファロイジンとDAPIを用いた免疫蛍光染色を行い,骨細胞数とLCN分布率を分析した.
【結果と考察】
骨細胞と骨細胞突起は新生骨形成と共に徐々に宿主骨と移植骨の間隙に広がっていた.2週目は様々な方向へ延びる短い骨細胞突起が認められたが,4週目はより長い骨細胞突起が認められた.BB群は骨細胞数とLCN分布率が最も低く,NN群はどちらも高い数値を示した.NB群とBN群は中程度の値を示した.以上よりコラーゲン架橋阻害による骨質の低下は,骨細胞ネットワーク形成を低下させる可能性があり,宿主と移植骨両方の骨質が新生骨形成に影響を及ぼしていることが分かった.結論として,骨移植後の骨細胞の状態および骨細胞ネットワークの再構築は,宿主と移植骨各々の骨質によって異なる可能性があることが示された.
【参考文献】
1) Schurman CA, Verbruggen SW, Alliston T. Disrupted osteocyte connectivity and pericellular fluid flow in bone with aging and defective TGF-β signaling. Proc Natl Acad Sci USA 2021 ;118(25):e2023999118.
骨細胞ネットワークは骨量と骨質を維持するための機械知覚と骨リモデリングに極めて重要である1).骨リモデリングにおける骨細胞の役割はよく知られているが,骨移植に最適な条件,特に骨細胞ネットワークと骨質の関係についてはよくわかっていない.本研究の目的は宿主と移植骨の骨質を様々に変化させた条件下で骨細胞のlacuno-canalicular network(LCN)の動態を調べることである.
【方法】
4週齢雄性SDラットを対照群と試験群に分けた.試験群にはコラーゲンの架橋を阻害するため,飲料水に0.2%β-アミノプロピオニトリル(BAPN)を4週間投与し,骨質不良モデルを作成した.両群をさらにドナーとレシピエントに分け,4つの実験群を作成した: NN(正常宿主/正常移植骨),NB(正常宿主/BAPN移植骨),BN(BAPN宿主/正常移植骨),BB(BAPN宿主/BAPN移植骨).移植骨はドナーの頭蓋骨から採取し,レシピエントに移植した.移植後1,2,4週目にサンプルを採取し,組織学的、組織形態学的分析を行った.また凍結切片標本を作製し,ファロイジンとDAPIを用いた免疫蛍光染色を行い,骨細胞数とLCN分布率を分析した.
【結果と考察】
骨細胞と骨細胞突起は新生骨形成と共に徐々に宿主骨と移植骨の間隙に広がっていた.2週目は様々な方向へ延びる短い骨細胞突起が認められたが,4週目はより長い骨細胞突起が認められた.BB群は骨細胞数とLCN分布率が最も低く,NN群はどちらも高い数値を示した.NB群とBN群は中程度の値を示した.以上よりコラーゲン架橋阻害による骨質の低下は,骨細胞ネットワーク形成を低下させる可能性があり,宿主と移植骨両方の骨質が新生骨形成に影響を及ぼしていることが分かった.結論として,骨移植後の骨細胞の状態および骨細胞ネットワークの再構築は,宿主と移植骨各々の骨質によって異なる可能性があることが示された.
【参考文献】
1) Schurman CA, Verbruggen SW, Alliston T. Disrupted osteocyte connectivity and pericellular fluid flow in bone with aging and defective TGF-β signaling. Proc Natl Acad Sci USA 2021 ;118(25):e2023999118.