講演情報
[ISL]骨生物学の最先端と歯学研究
*小野 法明1 (1. テキサス大学ヒューストン校歯学部)
キーワード:
骨格幹細胞、骨系統疾患、下顎頭軟骨
骨は歯科臨床における主要な治療の標的である。骨は可塑性と優れた再生能力を備える一方、骨粗鬆症や歯周疾患などに対して著しい脆弱性を示す二面性を持った器官である。骨量減少による大腿骨頭の骨折や歯槽骨減少による歯牙の喪失は健康寿命の短縮に直結することから、ヒトは生命を維持するために骨を作る骨芽細胞を常に作り続けられなければならない運命にある。その骨芽細胞を作り続ける供給源となるのが、骨系の細胞に特化した体性幹細胞、すなわち骨格幹細胞である。近年その生体内での局在が明らかとなるにつれ、骨格幹細胞が骨の成長、再生、疾患などの局面で担う多様な機能が注目を浴びている。当研究室では、特定の細胞集団の細胞運命を生体内で追跡する細胞系譜解析法を中心とし、単細胞、空間トランスクリプトーム解析、マウスジェネティックスなどのアプローチを網羅的に活用し、骨格幹細胞の機能の解析に取り組んでいる。この中でも今回は、現在研究室の主要なテーマとして取り組んでいる下顎頭軟骨の骨格幹細胞に関する最新の所見を紹介する。この下顎頭軟骨の幹細胞がどのように歯科臨床に関連した骨系統の疾患に関与しているか、またその治療標的となりうるかディスカッションしたい。頭蓋顔面骨格幹細胞とその細胞系譜に関する当研究室の取り組みが、今後歯科臨床において画期的な治療方法を生み出す道標を示すことができればと願う。