講演情報
[LS7]義歯安定剤に対する正しい知識
*黒岩 昭弘1 (1. 松本歯科大学歯科理工学講座)
キーワード:
義歯安定剤、使用方法、患者教育
これまで義歯安定剤に対する考えは否定的であったが,近年,その有用性が見直されている。筆者も義歯安定剤に非常に興味があり、以前、日本顎咬合学会の編集委員長をしていた際、本学術大会の大会長である村田比呂司教授に総説を寄稿していただき大変感銘した経緯がある。近年,残存歯を温存する傾向が高いので、歯を失った時の顎堤は高度に吸収し義歯の維持安定を図るには不利になっている。このような状況で不安定な義歯を安定化して咀嚼することによって得られる恩恵は大きい。また、部分床義歯でも支台歯がホープレスなのに患者がどうしても抜歯を望まない場合や新義歯を製作する際安定の悪い旧義歯の支台歯への負担軽減などに一時的に本剤を使うことによって恩恵が得られる。一番問題なのは患者が我々に隠れて使用し、使い方が適切でない場合である。これに加えて本材料の市場も大きいことから多くの患者が不適切に使っている。今回の講演では患者への適切な説明を示説し、臨床応用まで言及する。基本的にはクリーム状の安定剤を推奨し、ホームリライナーの使用は勧めていない。説明に関しては対象が高齢者であるため使用量や使用のタイミングをパンフレットの配布や口頭で行うだけでなく、実際にチェアサイドで貼付を実施させ理解度を確かめることも大切である。交換頻度、除去方法も加え患者はほとんど自己流で取り扱っているのが現状である。まず、本材料の特性を正しく理解し使えば補綴治療や装置の管理に有用なものとなる。加えて患者に正しい使用法を教育することも重要と考えている。