講演情報
[O1-2]規則的繰り返し荷重がButtressスレッドインプラント周囲骨に与える影響の検索
*土肥 聡一郎1、黒嶋 伸一郎2,3、右藤 友督2、澤瀬 隆2 (1. 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科口腔インプラント学分野、2. 長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野、3. 北海道大学大学院歯学研究院冠橋義歯・インプラント再生補綴学教室)
【目的】
インプラントへの荷重はインプラント周囲の骨質を適応変化させ,力学的機能を向上させることが報告されている.骨質とは骨密度とは異なる概念として米国国立衛生研究所により提唱され,骨微細構造,代謝回転,石灰化,損傷の蓄積などから構成される.我々は過去の研究1)において,長管骨に埋入されたインプラントスレッド形状が力学的に有利な骨質を誘導する可能性を報告したが,骨関連細胞の特性が異なる顎骨では現状評価が行われていない.本研究の目的は,顎骨に埋入されたButtressスレッドインプラントへの規則的繰り返し荷重がインプラント周囲の骨量・骨密度・骨質に与える影響を検索することにある.
【方法】
9週齢雌性Wistar系ラットの両側上顎第一臼歯を抜歯して4週後にButtressスレッドインプラントを埋入し,3週後に片側のインプラントに繰り返し荷重を5週間付与した(10N,3Hz,3600回/週,荷重群).対側は荷重を付与しなかった(非荷重群)(各群,n=7).マイクロCTによる三次元的構造解析,各種染色による組織形態学的・免疫組織化学的解析を行った.
【結果と考察】
規則的な繰り返し荷重は,顎骨に埋入されたインプラント周囲の骨量と骨密度に影響を与えず,インプラントネック近傍の皮質骨部では骨関連細胞数も変化が認められなかった.一方,下方の海綿骨部スレッド内部において,荷重群は非荷重群と比較して,骨面積率,骨細胞数,ならびに骨芽細胞数が有意に増大し,破骨細胞数は有意に減少していた.以上から,顎骨に埋入されたButtressスレッドインプラントへの繰り返し荷重は,海綿骨部の骨質の構成要素である骨代謝回転に影響を与えている可能性が推測された.Buttressスレッドインプラント周囲骨組織は荷重の影響を受けることで骨関連細胞動態を変化させ,骨質を適応変化させているのかもしれない.
【参考文献】
1)Uchida Y, Kuroshima S, Uto Y, et al. Intermittent administration of parathyroid hormone improves bone quality and quantity around implants in rat tibiae. J Oral Biosciences 2020; 62: 139-146.
インプラントへの荷重はインプラント周囲の骨質を適応変化させ,力学的機能を向上させることが報告されている.骨質とは骨密度とは異なる概念として米国国立衛生研究所により提唱され,骨微細構造,代謝回転,石灰化,損傷の蓄積などから構成される.我々は過去の研究1)において,長管骨に埋入されたインプラントスレッド形状が力学的に有利な骨質を誘導する可能性を報告したが,骨関連細胞の特性が異なる顎骨では現状評価が行われていない.本研究の目的は,顎骨に埋入されたButtressスレッドインプラントへの規則的繰り返し荷重がインプラント周囲の骨量・骨密度・骨質に与える影響を検索することにある.
【方法】
9週齢雌性Wistar系ラットの両側上顎第一臼歯を抜歯して4週後にButtressスレッドインプラントを埋入し,3週後に片側のインプラントに繰り返し荷重を5週間付与した(10N,3Hz,3600回/週,荷重群).対側は荷重を付与しなかった(非荷重群)(各群,n=7).マイクロCTによる三次元的構造解析,各種染色による組織形態学的・免疫組織化学的解析を行った.
【結果と考察】
規則的な繰り返し荷重は,顎骨に埋入されたインプラント周囲の骨量と骨密度に影響を与えず,インプラントネック近傍の皮質骨部では骨関連細胞数も変化が認められなかった.一方,下方の海綿骨部スレッド内部において,荷重群は非荷重群と比較して,骨面積率,骨細胞数,ならびに骨芽細胞数が有意に増大し,破骨細胞数は有意に減少していた.以上から,顎骨に埋入されたButtressスレッドインプラントへの繰り返し荷重は,海綿骨部の骨質の構成要素である骨代謝回転に影響を与えている可能性が推測された.Buttressスレッドインプラント周囲骨組織は荷重の影響を受けることで骨関連細胞動態を変化させ,骨質を適応変化させているのかもしれない.
【参考文献】
1)Uchida Y, Kuroshima S, Uto Y, et al. Intermittent administration of parathyroid hormone improves bone quality and quantity around implants in rat tibiae. J Oral Biosciences 2020; 62: 139-146.