講演情報

[O1-5]Piezo1の強制発現による機械刺激応答を介した骨形成

*根本 昌代1、天雲 太一1、重光 竜二1、鈴木 治2,4、小川 徹3、依田 信裕1 (1. 東北大学 大学院歯学研究科 口腔システム補綴学分野、2. 東北大学 大学院歯学研究科 顎口腔機能創建学分野、3. 東北大学 大学院歯学研究科 総合歯科診療部、4. 東北大学 大学院歯学研究科 歯科生体材料学分野)
【目的】
 骨組織再生研究では細胞,足場,細胞賦活因子の3要素を中心に開発が行われ,特に細胞賦活因子では骨形成因子(BMP)などの液性成長因子による再生療法が臨床応用されてきた.近年,機械感受性イオンチャンネルであるPiezoを介した機械刺激応答によって細胞の硬組織形成能が活発化することが報告されている.そこで本研究では,遺伝子導入によってPiezo1を強制発現させ,機械刺激による硬組織形成能の活性をin vitro,in vivoで評価することで,骨再生療法に対する応用の可能性を検討した.
【方法】
 骨芽細胞様細胞(MC3T3E1)および骨細胞様細胞(MLO-Y4)をストレッチチャンバーにて24時間培養後,遺伝子導入剤(JetPEI®: Illkirch, France)を用いてmCherryもしくはPiezo1をコードしたplasmid DNAの遺伝子導入を行った.その後,細胞培養伸展システム(Shellpa,メニコン,日本)にて機械刺激(圧縮率10%, 50回/分)を細胞に付与し,48時間後の遺伝子導入効率,細胞毒性,骨形成関連遺伝子の発現,28日後の石灰化能を評価した.さらにin vivoで硬組織形成能を評価するため,BMP-7,高濃度Piezo1,低濃度Piezo1,もしくは低濃度Piezo1とBMP-7をコードしたplasmid DNAを内包したリン酸カルシウムナノ粒子/カルボキシルセルロース複合体およびそのコントロール(以下CaP/BMP-7,CaP/H-Piezo1,CaP/L-Piezo1,CaP/2mix,CaP/CMC)をエッセン大学(ドイツ)と共同開発した.マウスの下顎骨頬側に直径 1.2 mm,深さ 0.6 mmの骨欠損を作成した後, CaPを移植し,14および21日後の組織反応について形態学的および組織学的観察を行った.
【結果と考察】
 Piezo1の遺伝子導入によって,骨形成関連遺伝子の発現が上昇した.また,マウス下顎骨の骨形成量は移植21日後にCaP/H-Piezo1群が他の群と比較して有意に高い値を示した.以上の結果から,Piezo1の強制発現はMC3T3E1およびMLO-Y4細胞の硬組織形成能を活性化し,骨形成を促進することが示された.本手法は,遺伝子導入による細胞の機械刺激応答性の向上により硬組織形成能を促進する,骨再生療法における新しいアプローチとなり得る.