講演情報
[O1-7]分子シャペロンGRP94は頭蓋顔面の正常な発生に必須である
*金井 凜1,2、阿部 真土2、佐伯 直哉2、立田 咲百合2、住友 倫子3、大庭 伸介2、西村 正宏1 (1. 大阪大学歯学研究科再生歯科補綴学講座、2. 大阪大学歯学研究科組織・発生生物学講座、3. 徳島大学歯学部口腔微生物学分野)
【背景】
分泌タンパクや膜タンパク質の正常な折り畳みを制御することで異常なタンパク質凝集を回避する事で知られるGlucose-Regulated Protein 94(GRP94)は小胞体に局在するHSP90ファミリー分子である.正常発生に必須であることが知られているが,発生過程においてどのように寄与しているかの詳細は不明である.
【目的】
発生後期過程におけるGRP94の個体レベルでの役割を見出すことを目的とする.
【材料および方法】
神経堤細胞特異的にGRP94をコンディショナルに欠失させたマウス(Wnt1cKO)および骨前駆細胞特異的に欠失させたマウスを用いて解析を行った.
【結果】
GRP94を神経堤細胞特異的に欠失させたマウスは胎生後期過程まで発生は進行したが,出生後致死を示した.その表現型は重篤で中顔面低形成や,下顎骨,頭蓋冠発生部位に異所性の軟骨形成を認めた.歯胚の形態形成はほぼ正常に見られるものの,その発生部位は眼球近傍に転位していた.神経堤細胞は頭頸部に広く遊走,分布することから,骨格系前駆細胞特異的にGRP94をコンディショナルに欠失させたマウスの表現型解析を行った(Dermo1cKO).Dermo1cKOは頭頸部および四肢骨格に重篤な形態異常を示し,Wnt1cKO同様,出生後すぐに致死を示した.頭蓋顔面部では眼間開離,小顎症,多数の血腫などを認めた.また,膜内骨化で発生する下顎骨の軟骨への分化転換も認めた.歯胚の位置異常は見られなかったが発生の遅延が認められた.さらに,顎関節において関節円板や関節腔の形成不全など重篤な発生異常が認められた.
【結論および考察】
今回の結果から,GRP94は胎生後期過程での頭蓋顔面形成に必須の役割を持つことが示唆されたことから,下顎骨や顎関節の機能維持にも関わっている可能性があり,今後さらなる機能解析を行う予定である.
【参考文献】
Changhui M, Miao W, Biquan L et al. PLoS ONE 2010 May 26;5(5)
分泌タンパクや膜タンパク質の正常な折り畳みを制御することで異常なタンパク質凝集を回避する事で知られるGlucose-Regulated Protein 94(GRP94)は小胞体に局在するHSP90ファミリー分子である.正常発生に必須であることが知られているが,発生過程においてどのように寄与しているかの詳細は不明である.
【目的】
発生後期過程におけるGRP94の個体レベルでの役割を見出すことを目的とする.
【材料および方法】
神経堤細胞特異的にGRP94をコンディショナルに欠失させたマウス(Wnt1cKO)および骨前駆細胞特異的に欠失させたマウスを用いて解析を行った.
【結果】
GRP94を神経堤細胞特異的に欠失させたマウスは胎生後期過程まで発生は進行したが,出生後致死を示した.その表現型は重篤で中顔面低形成や,下顎骨,頭蓋冠発生部位に異所性の軟骨形成を認めた.歯胚の形態形成はほぼ正常に見られるものの,その発生部位は眼球近傍に転位していた.神経堤細胞は頭頸部に広く遊走,分布することから,骨格系前駆細胞特異的にGRP94をコンディショナルに欠失させたマウスの表現型解析を行った(Dermo1cKO).Dermo1cKOは頭頸部および四肢骨格に重篤な形態異常を示し,Wnt1cKO同様,出生後すぐに致死を示した.頭蓋顔面部では眼間開離,小顎症,多数の血腫などを認めた.また,膜内骨化で発生する下顎骨の軟骨への分化転換も認めた.歯胚の位置異常は見られなかったが発生の遅延が認められた.さらに,顎関節において関節円板や関節腔の形成不全など重篤な発生異常が認められた.
【結論および考察】
今回の結果から,GRP94は胎生後期過程での頭蓋顔面形成に必須の役割を持つことが示唆されたことから,下顎骨や顎関節の機能維持にも関わっている可能性があり,今後さらなる機能解析を行う予定である.
【参考文献】
Changhui M, Miao W, Biquan L et al. PLoS ONE 2010 May 26;5(5)