講演情報

[O2-1]可撤式補綴装置を想定したPEEKとリライン材との接着強さの検討

*平田 貴哉1、隅田 由香1、髙橋 英和2、五味 治徳3 (1. 日本歯科大学生命歯学部 歯科補綴学第1講座、2. 日本歯科大学生命歯学部 歯科理工学講座、3. 日本歯科大学生命歯学部 歯科補綴学第2講座)
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【目的】
 可撤式補綴装置のフレームとしてPoly Ether Ether Ketone(以下PEEKとする)が昨今提案されている.長期に補綴装置を使用した際は,リラインなどによる粘膜適合調整が必要となる.本研究は義歯フレームワークまたは義歯床を想定したPEEK材と義歯用リライン材との接着強さを明らかにすることを目的とした.
【方法】
 PEEKディスク(松風)から切り出した板状試験片(25mm×25mm×3mm)を#2000の耐水研磨紙で研磨後超音波洗浄を行った.試験片は精製水中37℃で7日間保管し被着体とした.
 引張試験はISO10139-2:2016に準じて行った.リライン材はアクリル系硬質リライン材(松風デンチャーライナー,松風;DL)とシリコーン系軟質リライン材2種類(ジーシーリラインIIソフト,ジーシー;RLおよびソフリライナータフスーパーソフト,トクヤマデンタル;ST)とを用いた.水中より取り出した被着体表面をエアーで乾燥後,それぞれ付属のプライマーを塗布後にエアーで乾燥した.被着体中央に内径10mm高さ3mmのポリプロピレン製リングを設置し,メーカー指示で練和したリライン材を充填し,別の被着体で挟み込むようにクランプで固定した.被着体は乾式保温槽に37℃で10分間保管後にクランプを外し,さらに37℃の精製水中で24時間静置保管した.引張試験は万能試験機(AUTOGRAPH AGS-X,島津)にてクロスヘッドスピード10mm/minで行った.引張試験は各リライン材で14回行った.接着強さは引張試験の最大荷重を接着面積で除したものとした.得られた接着強さはKruskal-Wallis検定を行った後にSteel-Dwass検定を行った.有意水準は0.01とした.
【結果と考察】
 得られた接着強さを図に示す.接着強さはRLが最も高く,STが最も低い値を示したが,いずれも1MPa以上の値であった.またDLとRLの間及びRLとSTの間で有意な差が認められた(P<0.01).また、破壊様相はDLでは界面破壊,RLとSTでは混合破壊だった.
 以上より本実験で使用したリライン材の義歯フレームワークまたは義歯床を想定したPEEK材との接着強さは臨床上許容されるものと示唆された.本研究は短期間の水中保管後の値のため,今後はサーマルサイクルなどの加速度劣化試験での評価も必要である.