講演情報

[P-1]開口障害を有する患者の金属床義歯の修理への3Dプリントカスタムトレーの応用

*小山田 勇太郎1、中西 厚雄1、佐々木 佑夏1、福徳 暁宏1、田邉 憲昌1、今 一裕1 (1. 岩手医科大学 歯学部 冠橋義歯・口腔インプラント学分野)
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【目的】
 デジタル技術の発展によって,部分床義歯のような人工歯,義歯床,フレームワークなど複数の構造からなる補綴装置の製作が可能になっている.しかし,義歯のリラインや増歯などの補修処置には,使用する材料や機器などの関係から従来のアナログ手法が用いられている.今回,開口障害を有する義歯装着患者への義歯修理に3Dプリントカスタム (3DPC)トレーを応用した症例について報告する.
【方法】
 患者は78歳男性.8年前に下顎両側遊離端のメタルオクルーザルの金属床義歯の製作を行い,以降良好に経過していた.今回,支台歯である45が歯根破折のため保存不可能となり,抜歯後の義歯修理を行うこととなった.患者は下顎頭の滑膜軟骨腫のため中等度の開口障害を有しており,日常生活では大きな問題はないが,印象採得で既製トレーを使用した場合に印象採得後の印象体の撤去が困難になる問題があった.そのため,3DPCトレーを使用した義歯修理印象を行うこととした.患者の義歯装着、非装着時の口腔内スキャンを行い,汎用CADソフトウェアへデータを送信した.ソフトウェア上では開口量の関係から小臼歯部までを被覆し,欠損部頬側の義歯辺縁を設定する長さまでトレーの設計を行った.設計データはDLP方式の3Dプリンターに送信し造形,後処理を行なって完成とした.患者の44の支台歯形成と咬合採得を行なった後で,義歯とトレーにアドヒーシブを塗布しシリコン印象材を使用した二重同時印象採得を行った.上顎についても小臼歯部までの範囲の3DPCトレーを使用し対合歯の印象採得を行った.その後,石膏模型を製作し,従来通りにチタンフレームワークのレーザー溶接と増歯増床修理を行った.
【結果と考察】
 完成した義歯は口腔内での適合は問題なかったが,従来法と同様に粘膜面や咬合の微調整は必要であった.本手法は,従来の方法でも再現可能であるかもしれないが,従来法における技工操作の煩雑さを解消可能である.技術革新によって口腔内スキャナーの臨床応用は拡大しているが,可撤性補綴治療など臨床での個人トレーの使用は今後も予想される.デジタル技術を応用することで患者それぞれに合わせた個人トレー製作が容易となった.