講演情報

[P-11]ショートインプラントを用いたインプラント支持パーシャルデンチャーの有限要素法解析

*中村 健太郎1、熊野 弘一1、神原 亮1、中村 好徳1、安藤 彰浩1、白石 浩一1、藤波 和華子1、佐藤 徹1、尾澤 昌悟1、武部 純1 (1. 愛知学院大学歯学部有床義歯学講座)
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【目的】
 口腔インプラント治療は,部分歯列欠損症例に対する補綴歯科治療の選択肢として位置づけされている.しかし,解剖学的な制約や外科的侵襲の問題,患者の全身状態などにより,固定性インプラントによる補綴歯科治療を適応することが困難な場合がある.近年,欠損部顎堤や残存歯を最大限利用しつつ,必要最小本数のインプラントをパーシャルデンチャーの支持要素として活用することで,義歯の動揺を抑制しようとする治療法が普及してきている1).しかし,外科的侵襲の軽減を目的としてショートインプラントを活用した場合,どのような力学的効果があるか詳細な報告はなされていない.そこで本研究では,遊離端欠損症例へのショートインプラントの適用が,粘弾性特性を有する歯根膜や顎堤粘膜に対して如何なる力学的影響をもたらすのか,三次元有限要素法を用いて検討することを目的とした.
【方法】
 モデル構築には,下顎石膏模型および頭蓋骨モデルを用いて行った.欠損部位は765┬56とし,4┬4にRPIクラスプ,⎾7には磁性アタッチメントを適応したオーバーデンチャーを基本モデルとした.解析モデルは,基本モデルおよび右側遊離端欠損部の7⏋,6⏋,5⏋相当部に6.5mmのショートインプラントを埋入したモデルとし,計4つの解析モデルの応力解析を行った.
【結果と考察】
 解析結果により,インプラントを6⏋,5⏋に埋入したモデルでは4⏋支台歯周囲骨の応力分布の減少が認められ,埋入位置が遠心に行くほど支台歯への応力分布が増加していくことが認められた.義歯沈下量については,インプラント支持モデルで大幅に抑制され,特にインプラントを6⏋に埋入したモデルで最も沈下量が小さいことが認められた.一方,インプラント埋入部位周囲骨の応力分布では,埋入位置が前方に行くほど応力が増加していくことが認められた.これらの結果から,遊離端欠損部にショートインプラントを適用することで,支台歯周囲骨の応力緩和や義歯の安定性向上といった力学的効果が得られることが示唆された.
【参考文献】
1) 大久保力廣.インプラント支持を利用したパーシャルデンチャーの考え方と設計.日補綴会誌 2020;12(1):23-28.