講演情報

[P-117]睡眠時無呼吸の口腔内装置療法が顎関節症に及ぼす影響:系統的レビューとメタ解析

*石山 裕之1、西山 暁2、笛木 賢治1 (1. 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 咬合機能健康科学分野、2. 東京科学大学 大学院医歯学総合研究科 総合診療歯科学分野)
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【目的】
 閉塞性睡眠時無呼吸呼吸(OSA)に対する口腔内装置(MAD)療法が,顎関節症(TMDs)に及ぼす影響を明らかにするため,関連する研究のシステマティックレビューおよびメタ解析を行うことである.
【方法】
 MEDLINE,Cochrane Central Register of Controlled Trials,Web of scienceを用いて,出版年および言語に制限を設けず,系統的に検索した. MAD療法開始から最長6年後までTMDsの評価を行った前向き研究を対象とし,アウトカムはTMDsの痛みおよび開口障害などとした.データはRevMan5.4で統合し,オッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)で示した.RoB2.0とROBINS-Iにて個々の研究の質を評価し, GRADEシステムを用いて統合されたエビデンスの質の評価も行った.
【結果と考察】
 最終的に14論文が採択され,平均評価期間は18.4ヵ月であった.評価法としてRDC/TMDを用いた研究が4件,Helkimo Indexを用いた研究が6件,質問票を用いた研究が4件であった.全体的なエビデンスの確実性は低であった.MAD使用から6ヵ月未満(短期予後)と,1年以上(長期予後)で分けてメタ解析を行った結果,短期予後ではPain-related TMDs, 顎関節や咀嚼筋の痛みに有意差を認め,TMDsの発症や悪化の危険因子ある事を示した(Pain-related TMDs: 4.49 [95%CI: (1.46,13.81)]; p<0.01,顎関節や咀嚼筋の痛み: 2.90[95%CI: (1.26,6.71)] ; p=0.01).長期予後では,顎関節や咀嚼筋の痛みに有意差を認め, 有害事象を起こさないことを示した(0.21[95%CI: (0.05,0.89)] ; p=0.03).
OSAに対するMAD療法は, 顎関節や咀嚼筋に長期的な有害事象をもたらさないことが示された. しかしMAD使用開始から短期間においては,顎関節や咀嚼筋に痛みを起こす可能性がある.よってこの期間中は症状に対するモニタリングと管理が必要な事が示唆された.