講演情報

[P-119]顎関節症の口腔機能に関する調査(顎関節症治療前後の舌圧と口唇閉鎖力の変化)

*島田 淳1,2 (1. 東京支部、2. 日本大学歯学部総合歯科学分野)
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【目的】
 現在歯科では,小児期には口腔機能発達不全症,高齢期には口腔機能低下症への対処が行われているが,成人期の口腔機能については問題とされていない.顎関節症は成人に好発する顎機能障害であるが,舌圧,口唇閉鎖力など口腔機能についての評価は行われていない.しかし顎関節,咀嚼筋は咀嚼,嚥下,発音など口腔機能に関わることから,演者は顎関節症を,成人期の口腔機能障害として捉え,18歳~50歳代の成人期顎関節症患者における口唇閉鎖力,舌圧を測定したところ,多くの被験者で基準値より低い値を示したことを第35回日本顎関節学会学術大会にて報告した1).今回は顎関節症治療前後の舌圧,口唇閉鎖力について検討を行った.
【方法】
 対象は2022年1月~2024年12月の間に当院に来院し顎関節症と診断された19歳から50歳代の患者60名である.通常の顎関節症検査により顎関節症と診断し,病態分類を行い,患者の同意を得たのち,治療前後において舌圧,口唇閉鎖力を測定し比較を行った.舌圧測定には,JMS社製,舌圧測定器(TMPM-02)を,口唇閉鎖力測定には松風社製,口唇閉鎖力測定器「りっぷるくん」を用い,治療前後にそれぞれ2回練習後,5回測定値の平均値について検討を行った.   
【結果と考察】
 顎関節症患者の舌圧,口唇閉鎖力とも治療前では標準値より低い値を示すものが多かった.また顎関節症の治療により,顎関節症症状が改善した後,舌圧,口唇閉鎖力ともに数値は高くなる患者は多かったが,それでも標準値よりも下回る者も多くみられた.これは,顎関節症患者において,口腔機能発達不全症の延長,または早期の口腔機能の低下が生じていることが考えられ,顎関節症は口腔機能障害として口腔機能管理を行う必要があると思われた2).
【参考文献】
1) 島田淳.顎関節症患者の舌圧と口唇閉鎖力に関する検討.日顎誌2022;34:120.
2) 島田淳.顎関節症から考える人生を通した口腔機能管理の重要性について.モリタデンタルマガジン 2023;184:70-75.