講演情報

[P-121]裸眼立体視における支台歯形成のシミュレーター

*富田 凜太郎1、板宮 朋基3、中野 亜希人3、斎田 牧子1、本間 優太1、相川 雅志1、川西 範繁1、星 憲幸2、木本 克彦1 (1. 神奈川歯科大学 クラウンブリッジ補綴学分野、2. 神奈川歯科大学 口腔デジタルサイエンス学分野、3. 神奈川歯科大学歯学部 総合歯学教育学講座 教養教育学分野)
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【目的】
 歯科診療における手技施術の向上は歯科教育において重要な項目の一つであるが、学生実習時間は限られており、少ないトレーニング時間での手技技術習得は歯科教育において重要な課題となっている.このような課題に対し昨今ではバーチャルリアリティ(VR)を用いたトレーニングが有力視されており、装着型デバイスを用いた歯科トレーニングが開発され評価を得ている1).しかしながら、衛生的欠点や臨床と比較した視覚的距離感覚の不一致などの視覚的欠点がある.そこで我々はそれらの欠点を改善するため、裸眼立体視が可能な空間再現ディスプレイ(SRD)を用いた支台歯形成シミュレーターを独自開発し、その有用性について報告する.
【方法】
 裸眼立体視技術を活用した空間再現ディスプレイを視覚デバイスとし、ハプティクスデバイスにより触覚再現を搭載した支台歯形成シミュレーターを独自開発した(図表1).バーチャル上で操作できる歯牙模型は従来型トレーニングで使用するプラスチック歯を口腔内スキャナーで読み込み、切削・変形が可能なデータに変換し、支台歯形成のシミュレーションを可能にした.支台歯形成後、歯牙模型データから切削量を算出し、模範例と比較した形成自動採点機能を実装した.歯科医師20名を対象に本システムによる支台歯形成のシミュレーションを2DディスプレイとSRDの両方で実施し、歯牙模型データによる客観的評価項目とアンケート調査を行った.
【結果と考察】
 評価項目ではSRDは模範例に近い形成が可能(図表2)であり,経験豊富な歯科医師ほど2Dディスプレイでの操作は困難であることがわかった.アンケート調査ではSRDは歯科診療シミュレートにおいて有用であり、支台歯形成における学習効果が向上すると示唆された.今後はさらに本システムの操作性と自動採点機能の充実を目指し、学生を対象にした学習効果を検証する予定である.
【参考文献】
1) Kaluschke M, Zachmann G. The effect of 3D stereopsis and hand-tool alignment on learning effectiveness and skill transfer of a VR-based simulator for dental training. Plos One 2023;18(10): e0291389.