講演情報

[P-17]口蓋形態が義歯安定剤使用下での実験用口蓋床の維持力に与える影響

*杉木 亨1、山根 邦仁2、向井 友子2、鈴木 鵬生1、田畑 友寛1、平山 茉奈1、原 聰1、飯島 裕之1、田上 理沙子1、北株 賢太郎1、大森 友花1、鈴木 啓之1、下平 修1、佐藤 裕二1、古屋 純一1 (1. 昭和医科大学 大学院 歯学研究科 口腔機能管理学分野、2. 昭和医科大学 歯学部 口腔健康管理学講座 口腔機能管理学部門)
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【目的】
 高齢患者では口腔乾燥や高度顎堤吸収を認めることも多く,義歯の維持を得るために義歯安定剤の使用を推奨する場合も少なくない.しかし,一般的に普及しているクリームタイプ義歯安定剤は,口腔や義歯床からの除去が容易ではなく,不快感や口腔衛生不良の原因となりやすいため,近年,水洗で容易に除去可能なジェル状の義歯安定剤が開発された.我々は先行研究において,有歯顎者を対象に,義歯安定剤を塗布した実験用口蓋床の維持力を測定し,クリームタイプと比較し,ジェル状義歯安定剤(ピタッと快適ジェル,日本歯科薬品)の有効性を解明してきた1).しかし,義歯の維持力は口蓋の形態にも影響されるため,本研究ではジェル状義歯安定剤使用下での実験用口蓋床の維持力と口蓋形態との関連を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 先行研究で用いた実験用口蓋床の作業模型における口蓋の深さ,幅径,投影面積の計測を行った.深さと幅径の計測には型取りゲージ(CG-100S®,新潟精機)を用いて,上顎左右側第一大臼歯頬側溝を結んだ直線の中点から垂線を下し,口蓋表面までの長さを口蓋の深さ,舌側面間の幅を幅径とした.また,咬合平面に対し垂直方向から口蓋を撮影し,ピクセル数から画像編集ソフトを用いて投影面積を測定した.得られた口蓋の深さ,幅径,投影面積と先行研究における維持力の測定値についてSpearmanの相関分析を行った.有意水準は5%とした.
【結果と考察】
 義歯安定剤無しの状態では,装着直後,20分後,30分後で維持力と投影面積の間に相関関係が認められた(図)が,義歯安定剤使用下では有意な相関関係は認めなかった.口蓋の深さと幅径と維持力との間にはいずれの条件下でも相関関係は認められなかった.以上から口蓋の投影面積が大きいほど義歯の維持力は高い傾向にあるが,ジェル状義歯安定剤の使用によって口蓋の投影面積の差を補償できる可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Yamane K, Sato Y, Furuya J. Effect of the denture adhesive for dry mouth on the retentive force of the experimental palatal plates: a pilot controlled clinical trial. BMC Oral Health 2023; 344: 1-10.