講演情報
[P-19]義歯支台歯の治療介入から見る診療実態の評価と診療報酬増収へ向けた試み
*永井 千晶1、柴口 塊3、渡久地 隆政1、加我 公行1、益城 開斗1、南原 太晴1、伊藤 天音1、前山 駿1、林 周季1、藤井 景大1、中尾 建斗1、渡久地 泰政1、杉本 太郎2、松浦 尚志1 (1. 福岡歯科大学 咬合修復学講座、2. 福岡歯科大学医科歯科総合病院中央技工室、3. 九州支部)
【目的】
補綴診療科における部分欠損症例に対し, 義歯支台歯へ適正な補綴前処置による予知性の高い補綴治療がなされているかの評価, また診療稼働額に見る大学病院経営, 治療計画立案の面で改善幅の有無の考察を目的とした.
【方法】
技工録, 電子カルテ, X線データにより, 過去2年間に福岡歯科大学医科歯科総合病院補綴診療科で38名の歯科医師により作製された部分床義歯1,075装置を対象とした. 義歯支台歯の総数, そのうち全部被覆冠が装着されている割合, 全部被覆冠を装着された支台歯のうちレストシート等を付与したサベイドクラウンとして新製された割合, を主な調査項目とした.
【結果と考察】
部分床義歯の支台歯総数は3,226歯で1症例あたり3歯に相当した. そのうちの全部被覆冠装着歯であった1,503歯中, 248歯が補綴診療科にてサベイドクラウンが新製され, 全体の16.5%だった. 同診療科を構成する2教室間での比較では, 教室1で191歯(29.2%), 教室2で57歯(6.71%)となり, 両者の間に統計学的有意差を認めた(図1).
不十分な支台歯構造は義歯の沈下や支台歯への力学的負担増加を招く1). 既存の全部被覆冠が装着された支台歯の再補綴治療は, 支台歯状態の詳細な把握, 適切な支台歯構造の付与等の点より重要である. 同治療の割合を補綴診療科の歯科医師38名が全体平均である16.5%, 教室1の平均である29.2%, の各水準に引き上げた場合, 例えば診療科全体の年間稼働額は保険点数換算で1.41倍, 1.96倍に増加する試算となった. 1症例あたりの平均支台歯数である3歯に対し新たに歯冠補綴を行うと, 1症例あたり平均2.97倍の診療報酬を見込めた. 部分欠損症例に対する予知性の高い治療の提供と適正な診療報酬の確保という点で, 本研究の意義は大きい. 補綴診療科の両教室間で差が生じた要因として配当患者の傾向, 治療計画立案における方針等の相違が示唆される. 教室の枠を超えコンセンサスの構築と教育体制の重要性が考察され, 今後の前向き研究へ繋げる予定である.
【参考文献】
1) Phoenix RD, Cagna DR, DeFreest CF. Stewart's clinical removable partial prosthodontics 4th ed. Chicago; Quintessence Publishing Co Inc: 2008, 101-102.
補綴診療科における部分欠損症例に対し, 義歯支台歯へ適正な補綴前処置による予知性の高い補綴治療がなされているかの評価, また診療稼働額に見る大学病院経営, 治療計画立案の面で改善幅の有無の考察を目的とした.
【方法】
技工録, 電子カルテ, X線データにより, 過去2年間に福岡歯科大学医科歯科総合病院補綴診療科で38名の歯科医師により作製された部分床義歯1,075装置を対象とした. 義歯支台歯の総数, そのうち全部被覆冠が装着されている割合, 全部被覆冠を装着された支台歯のうちレストシート等を付与したサベイドクラウンとして新製された割合, を主な調査項目とした.
【結果と考察】
部分床義歯の支台歯総数は3,226歯で1症例あたり3歯に相当した. そのうちの全部被覆冠装着歯であった1,503歯中, 248歯が補綴診療科にてサベイドクラウンが新製され, 全体の16.5%だった. 同診療科を構成する2教室間での比較では, 教室1で191歯(29.2%), 教室2で57歯(6.71%)となり, 両者の間に統計学的有意差を認めた(図1).
不十分な支台歯構造は義歯の沈下や支台歯への力学的負担増加を招く1). 既存の全部被覆冠が装着された支台歯の再補綴治療は, 支台歯状態の詳細な把握, 適切な支台歯構造の付与等の点より重要である. 同治療の割合を補綴診療科の歯科医師38名が全体平均である16.5%, 教室1の平均である29.2%, の各水準に引き上げた場合, 例えば診療科全体の年間稼働額は保険点数換算で1.41倍, 1.96倍に増加する試算となった. 1症例あたりの平均支台歯数である3歯に対し新たに歯冠補綴を行うと, 1症例あたり平均2.97倍の診療報酬を見込めた. 部分欠損症例に対する予知性の高い治療の提供と適正な診療報酬の確保という点で, 本研究の意義は大きい. 補綴診療科の両教室間で差が生じた要因として配当患者の傾向, 治療計画立案における方針等の相違が示唆される. 教室の枠を超えコンセンサスの構築と教育体制の重要性が考察され, 今後の前向き研究へ繋げる予定である.
【参考文献】
1) Phoenix RD, Cagna DR, DeFreest CF. Stewart's clinical removable partial prosthodontics 4th ed. Chicago; Quintessence Publishing Co Inc: 2008, 101-102.