講演情報

[P-21]光造形法における積層方向が造形物の機械的特性に及ぼす影響

*永田 俊介1、加藤 由佳子1、北川 剛至2、谷本 安浩1 (1. 日本大学松戸歯学部歯科生体材料学講座、2. 日本大学松戸歯学部口腔インプラント学講座)
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【目的】
 光造形方式の3Dプリンタによる義歯製作は盛んに行われており,造形条件が機械的特性に与える影響を明らかにする必要がある.本研究では,光造形方式による積層造形物において,積層方向および積層ピッチが機械的性質に及ぼす影響を調査した.
【方法】
 本研究で使用した試料の3Dデータは,CADソフトウェア(Tinkercad, Autodesk)を用いて作成し,造形条件(積層ピッチおよび積層方向)の設定は3Dプリント用ソフトウェア(PreForm 3.43.1, Formlabs)上で行った.試料の造形には光造形方式3Dプリンタ(Form 3B+, Formlabs)を使用し,造形材料には光硬化性樹脂(Model Resin V3, Formlabs)を用いた.積層ピッチは50 µmおよび100 µmの2種類を設定し,試料の寸法は義歯床用レジンのJIS T 6501:2019に規定されている試験条件に準じ,長さ64 mm,幅10 mm,厚さ3.3 mmとした.試料の積層方向は64 mm×10 mmの面を3Dプリンタの造形面と平行にした状態を0°とし,造形面に対してそれぞれ0°,45°,90°回転させた3種類(0 -Ⅰ,45 -Ⅰ,90 -Ⅰ)と,10 mm×3.3 mmの面を造形面と平行にした状態を0°とし,0°および45°回転させた2種類(0 -Ⅱ,45 -Ⅱ)を製作した.これにより,積層ピッチごとに合計5種類の試料を準備した.造形後はメーカー指定の後処理を施し,37℃の蒸留水中で50時間保管後に試験を行った(n=6).機械的性質の評価にはダイナミック超微小硬度計(DUH-211,島津)を用いてダイナミック硬さ試験を行い,ダイナミック硬さを算出した.また,曲げ試験は万能試験機(TG-5kN,ミネベアミツミ)を使用し,曲げ強さ(MPa)および曲げ弾性係数(GPa)を算出した.
【結果と考察】
 機械的試験の結果をFig. 1に示す.ダイナミック硬さ試験の結果,積層ピッチが50 µmの場合,0 -Ⅰは90 -Ⅰよりも有意に低い値を示した.曲げ試験では,積層ピッチが100 µmおよび50 µmの場合に,0 -Ⅰが他の条件と比較して有意に低い曲げ弾性係数を示した.以上の結果より,積層方向が45 -Ⅰ,90 -Ⅰ,0 -Ⅱおよび45 -Ⅱの場合,それらの光硬化性樹脂の機械的性質にはほとんど差がみられなかったが,0 -Ⅰの場合は有意に低下することが確認された.