講演情報

[P-61]糖尿病治療薬投与がラット脛骨インプラント周囲骨骨形成能に与える影響の評価

*益﨑 与泰1、末廣 史雄2、駒走 尚大2、西村 正宏3、内藤 徹1 (1. 福岡歯科大学、2. 鹿児島大学、3. 大阪大学)
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【目的】
 糖尿病はインプラント治療における相対的禁忌であり,血糖値のコントロールはインプラント治療の予後に影響すると考えられている.本研究では糖尿病治療薬であるSGLT-2阻害薬をインプラント埋入後に投与することで血糖コントロールを行っていないものと比べ骨形成能に改善が見られるか評価を行うものである.
【方法】
 コントロールとして10週齢Wisterラット(CO群),糖尿病モデルとして10週齢Goto-Kakizakiラットを用いた.糖尿病モデルはSGLT-2阻害薬を投与する群(MD群)と投与しない群(GK群)の2群に分け,合計3群で以下の実験を行った.ラット脛骨に直径1mm長さ2.5mmのチタン棒を埋入後,MD群にはSGLT-2阻害薬イプリグラフロジンを経口投与し,2週間後,4週間後に組織学的評価,形態計測学的評価,SEM評価,血清生化学的評価,血糖値,体重,力学的評価を行った.
【結果と考察】
 組織学的にGK群はCO群およびMD群に比べ骨形成が少なく,形態計測学的には2週間後,4週間後においてGK群はCO群に比べ有意に骨形成量が少なかった.SEM評価ではGK群の骨形成が少ないこと,CO群はMD群と比べ新生骨に厚みがあることが確認された.血清生化学的評価においてはクレアチニン,AST,ALTいずれにおいても数値に差がなかった.体重の変化は見られなかったが,血糖値はMD群で減少が見られた.力学的評価は2週間後においてGK群はMD群,CO群に比べトルク値が低いことが示された.今回の結果よりSGLT-2阻害薬の経口投与で血糖値が減少し,副作用が生じることなく,血糖値がコントロールされていないものよりも骨形成に改善が見られる傾向が示された.血糖値のコントロールが行われていないと骨形成量が健常モデルと比べ少なかったが,これは糖尿病患者おける創傷治癒遅延が生じ,骨形成の遅延が生じている可能性が考えられた.糖尿病患者のインプラント周囲炎リスク報告からもインプラント治療を行う場合は血糖値のコントロールを継続することが重要であると考えられた.
【参考文献】
1) Nbali L, Gkranias N, Mainas G et al. Periodontitis and implant complications in diabetes. Periodontol 2000 2022;90(1):88-105.