講演情報

[P-64]埋入トルク積算値によるインプラント初期固定新規評価法の試み

*小畠 玲子1、土井 一矢1、泉川 知子1、若松 海燕1、森本 雄介1、津賀 一弘1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学)
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【目的】
 インプラント初期固定の評価には,埋入トルク値や共鳴振動周波数を応用したインプラント安定係数が用いられている.埋入トルク値は主に最大値にて評価されるが,実際にはトルクは経時的に発生・変化している.発表者らはこのトルク値を積算することで初期固定を術中のトルク値変化も含めて詳細に評価することを着想した.本研究では,模擬海綿骨ブロックおよびウシ肋骨にインプラント体を埋入し,この時発生する埋入トルクの積算値を測定し,最大トルク値およびインプラント安定係数との相関を検討することで,新規初期固定評価法としての有用性を明らかにすることとした.
【方法】
 Misch分類D1~D4に相当する密度を有するポリウレタン製模擬骨ブロックおよびウシ肋骨ブロック(冷凍保存,未固定)を準備した.各材料に埋入窩を形成し,チタン合金製インプラント体(直径4.2 mm,高さ10 mm,機械研磨表面)を埋入した(各模擬骨n=15,ウシ骨n=30).埋入トルクは0.05秒間隔にて測定し,その最大値および積算値を記録した.埋入後にインプラント安定係数を測定した.埋入トルク積算値と最大値およびインプラント安定係数との相関を検討した.また,ウシ骨からインプラント体を撤去後に脱灰標本を作成し,ヘマトキシリン・エオジン染色を行い組織学的に観察した.
【結果と考察】
 均一な構造を有する骨ブロックでは,埋入トルク積算値は最大埋入トルク値およびインプラント安定係数と高い相関を認めた(Pearson’s r=0.99,r=0.81),さらにウシ骨ブロックにおいて埋入トルク積算値は周囲骨に応じて値が変化し,最大埋入トルク値およびインプラント安定係数との相関を認めた(Spearman’s r=0.95,r=0.77).以上より新たに考案した埋入トルク積算値の初期固定評価法としての有用性の一端が明らかとなった.今後は異なる形状ならびにサイズのインプラント体での比較を行い,さらなる検討を進める.