講演情報

[P-68]トレッドミル運動によるストレス誘発顔面痛と不安の軽減効果は運動頻度に依存する

*長谷川 真奈1、岡本 圭一郎2、岩本 佑耶2,3、山村 健介2、藤井 規孝1,3 (1. 新潟大学医歯学総合病院 歯科総合診療科、2. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生理学分野、3. 新潟大学大学院医歯学総合研究科 歯科臨床教育学分野)
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【目的】
 われわれは以前,10日間のトレッドミル運動(TR)がストレス誘発性の不安や顔面部の痛みを軽減すること,そしてその基盤は変調した脳機能の改善が関与することを報告した.本研究は,TRによる不安や痛みの改善効果はその運動頻度に依存すること,さらにその基盤として脳皮質でのエピジェネティックな変化の改善が関与する,と仮説を立て基礎的に検討することを目的とする.
【方法】
 C57BL/6Jマウス(オス)を用い,10日間(Day 1-10)の社会的敗北ストレス(SDS)処置によりストレスモデルを作製した.不安および顔面痛を評価する行動実験はSDS開始前と終了後に実施した.TR(6 m/分、30分間/日)はDay 1-10の10日間実施する群(TR10)と、Day 9と10の2日間のみ実施する群(TR2)を設定し,非運動群と比較した.不安行動は明暗箱,高架型十字迷路,Open Field、Social Interactionテスト,疼痛関連行動は咬筋ホルマリンテストによって評価した.Day 13に免疫組織化学(IHC)を用いて,SDSおよびTRの処置が前帯状回および島皮質におけるアセチル化ヒストンH3(aH3)およびその脱アセチル化酵素(HDAC1)の陽性細胞数に及ぼす影響を定量化し,非ストレス(Sham)群と比較した.
【結果と考察】
 SDS群では,TR10は非運動群と比べて不安および顔面痛行動を有意に低下させた.一方,TR2は不安行動を低下させたが,顔面痛を軽減させなかった.Sham群ではTR10群で不安行動や顔面痛に変化はみられなかった.IHCの解析により,SDSはSham群と比較して前帯状回および島皮質におけるaH3およびHDAC1陽性細胞数を増加させていた.TR10群ではSDSによるaH3陽性細胞数の増加が抑制され,またSham, SDS群ともにTR2,TR10のいずれも非運動群と比較してHDAC1陽性細胞数の減少が認められた.以上よりTRは,社会的敗北ストレスによる顔面痛および不安を軽減するが,その効果は運動頻度に依存することが明らかとなった.特に10日間の運動が効果的であり,その作用は脳皮質(前帯状回および島皮質)のエピジェネティックな変化の改善に関連することが示唆された.一方,ストレスによる不安軽減は短期間のTR(TR2)でも有効であることが示された.