講演情報
[P-72]マウスの口腔顎顔面領域におけるTRPM8の発現局在解析
*久本 芽璃1、黒嶋 伸一郎1 (1. 北海道大学大学院歯学研究院冠橋義歯・インプラント再生補綴学教室)
【目的】
TRPM8は,温度や機械的刺激等に反応性を示すTRPチャネルの一種で,一部の感覚神経に発現する1)が,口腔顎顔面領域の局在と機能は不明である.本研究の目的は,作製したTRPM8に対する抗体の特異性を検証し,口腔顎顔面領域のTRPM8局在を解析することにある.
【方法】
野生型(WT)マウスとTrpm8GFP/GFPマウスで抗TRPM8抗体の特異性を確認後,WTマウスとTrpm8GFP/GFPマウスの舌組織を用いて抗TRPM8抗体とGFPの分布発現を検証した.また,Trpm8GFP/GFPマウスでGFP陽性線維の走行を3次元的に解析し,WTマウスでTRPM8と神経細胞特異的マーカーPGP9.5の局在を検索した.さらにTrpm8GFP/GFPマウスの歯槽骨で,歯の萌出時期の違いがGFP発現に与える影響を解析した.
【結果と考察】
抗TRPM8抗体はWTマウスの茸状乳頭に陽性反応を示し,Trpm8GFP/GFPマウスではシグナルが消失したことから,抗体の特異性が確認された.舌組織において,WTマウスでは抗TRPM8抗体が,また,Trpm8GFP/GFPマウスではGFPが味蕾周囲線維に陽性反応を示していた.さらにTrpm8GFP/GFPマウスの3次元的解析から,GFP陽性線維は味蕾を取り囲むが,内部組織に侵入しないことが分かった.以上から,TRPM8陽性線維は味細胞と直接的な関係性がないと考えられたが,WTマウスでTRPM8とPGP9.5が部分的に共発現したことから,TRPM8陽性線維は神経線維である可能性が高いと考えられた.一方,Trpm8GFP/GFPマウス歯槽骨では歯の萌出時期にGFP陽性細胞が確認されたが,抜歯後では非抜歯側でGFP陽性細胞が発現し,抜歯側で発現が認められなかった.以上より,TRPM8は咬合力による機械的刺激を感知し,歯槽骨では侵害受容器として機能する可能性が考えられた.顎骨の機械的刺激感知機構の解明は,抜歯後の歯槽堤吸収抑制の一助となるかもしれない.
【参考文献】
1) Acharya TK, Kumar S, Tiwari N, et al. TRPM8 channel inhibitor-encapsulated hydrogel as a tunable surface for bone tissue engineering. Sci Rep 2021; 12;11(1):3730.
TRPM8は,温度や機械的刺激等に反応性を示すTRPチャネルの一種で,一部の感覚神経に発現する1)が,口腔顎顔面領域の局在と機能は不明である.本研究の目的は,作製したTRPM8に対する抗体の特異性を検証し,口腔顎顔面領域のTRPM8局在を解析することにある.
【方法】
野生型(WT)マウスとTrpm8GFP/GFPマウスで抗TRPM8抗体の特異性を確認後,WTマウスとTrpm8GFP/GFPマウスの舌組織を用いて抗TRPM8抗体とGFPの分布発現を検証した.また,Trpm8GFP/GFPマウスでGFP陽性線維の走行を3次元的に解析し,WTマウスでTRPM8と神経細胞特異的マーカーPGP9.5の局在を検索した.さらにTrpm8GFP/GFPマウスの歯槽骨で,歯の萌出時期の違いがGFP発現に与える影響を解析した.
【結果と考察】
抗TRPM8抗体はWTマウスの茸状乳頭に陽性反応を示し,Trpm8GFP/GFPマウスではシグナルが消失したことから,抗体の特異性が確認された.舌組織において,WTマウスでは抗TRPM8抗体が,また,Trpm8GFP/GFPマウスではGFPが味蕾周囲線維に陽性反応を示していた.さらにTrpm8GFP/GFPマウスの3次元的解析から,GFP陽性線維は味蕾を取り囲むが,内部組織に侵入しないことが分かった.以上から,TRPM8陽性線維は味細胞と直接的な関係性がないと考えられたが,WTマウスでTRPM8とPGP9.5が部分的に共発現したことから,TRPM8陽性線維は神経線維である可能性が高いと考えられた.一方,Trpm8GFP/GFPマウス歯槽骨では歯の萌出時期にGFP陽性細胞が確認されたが,抜歯後では非抜歯側でGFP陽性細胞が発現し,抜歯側で発現が認められなかった.以上より,TRPM8は咬合力による機械的刺激を感知し,歯槽骨では侵害受容器として機能する可能性が考えられた.顎骨の機械的刺激感知機構の解明は,抜歯後の歯槽堤吸収抑制の一助となるかもしれない.
【参考文献】
1) Acharya TK, Kumar S, Tiwari N, et al. TRPM8 channel inhibitor-encapsulated hydrogel as a tunable surface for bone tissue engineering. Sci Rep 2021; 12;11(1):3730.