講演情報

[P-75]Niフリー磁性アタッチメントの開発
-Crめっきを応用した磁石構造体-

*菊地 亮1、高田 雄京1、小野寺 継喬1 (1. 株式会社ケディカ)
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【目的】
 国産の閉磁路型磁性アタッチメントには,磁気遮蔽材料としてニッケルを含むオーステナイト系ステンレス鋼が用いられているため,ニッケルアレルギーの患者には使用することができず,また医療機器認証基準ではニッケル含有量が0.1%を超える場合,表示義務がある.本研究では,安全性と信頼性を担保し,ニッケルアレルギーの患者さんにも勧めることができるニッケルを全く含まない磁性アタッチメントの開発を目的とした.
【方法】
 フェライト系ステンレス鋼SUSXM27(Fe-26Cr-1Mo)製ディスクヨークの外周に磁気遮蔽効果を付与するため,ステンレス丸棒に金またはクロムの厚膜メッキを施し,これを切断してシールドディスクを製作した.メッキ膜とステンレス鋼の接合を強化するため,めっき後に真空熱処理(800~900℃×10~30分)による固相拡散を行った.この磁気遮蔽リングを付与したシールドディスクを磁石構造体に組み込み,レーザー溶接することでニッケルを含まない磁石構造体を試作した.
【結果と考察】
 通常は下地膜として行うニッケルストライクメッキを省き金及びクロムメッキを行ったが,SUSXM27ステンレス棒鋼に厚膜メッキ(50~250μm)が可能であった.メッキ膜とステンレス鋼との接合性を向上させるため,熱処理による固相拡散を行った結果,両者の界面に相互拡散が観察され,非常に強固に接合できた.シールドディスクとカップヨークとのレーザー溶接では,凝固収縮による溶接割れなどの欠陥が初期に観察されたが,溶接部位およびレーザー強度等の条件を調整し,溶接部に亀裂もなく,SUSXM27と同等の耐食性(孔食電位)を示す溶接条件をクロムメッキ膜試作品に見出した.金メッキ膜による試作品では溶接部に低耐食性の相が形成され,長期間浸漬試験において必要な耐食性が確認できなかった.クロムメッキ膜の試作品では,長期耐食性試験および咬合試験(100N,約270万回)でも錆や破壊のない耐久性のあることを確認した.試作品の形状および維持力は従来品と同等であり,メッキ技術を利用することでニッケルを含まない閉磁路型磁石構造体の開発に成功した.