講演情報
[P-76]炎症性M1マクロファージの細胞移植がマウスBRONJ様病変に与える影響
*小堤 涼平1、黒嶋 伸一郎1,2、金子 遥1、澤瀬 隆1 (1. 長崎大学生命医科学域(歯学系)口腔インプラント学分野、2. 北海道大学大学院歯学研究院冠橋義歯・インプラント再生補綴学教室)
【目的】
ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)は,口腔顎顔面領域特有の難治性硬軟組織疾患であり,その病因は不明で根治的な治療法や予防法も存在しない.我々の過去の基礎研究では,M2マクロファージ(MΦ)の移植やMΦの枯渇がマウスBRONJ様病変に与える影響を検索し,BRONJの病態形成機構にMΦの細胞挙動が関与する可能性を報告した1).本研究の目的は,炎症性M1MΦの細胞移植がマウスBRONJ様病変に与える影響を検索することにある.
【方法】
8週齢の雌性C57/BL6Jマウスを用い,抗がん剤とBP製剤の併用投与に抜歯を組み合わせてBRONJ様病変モデルマウスを作製した1).次に,マウス長管骨(n=10)から骨髄由来細胞を採取し,各種成長因子(M-CSF,LPS,IFN-γ)で処理してM1MΦを樹立した.BRONJ様病変モデルマウスの抜歯と同時に,樹立M1MΦを全身的に移植し(実験群,1.0×106個/マウス),対照群は生理食塩水移植群とした(n=7/各群).抜歯2週後に屠殺し,上顎,長管骨,脾臓,血清を採取して各種定量解析を行った.
【結果と考察】
抜歯創部は実験群と対照群の両者で全て開放していたが,創部開放状態は実験群の方が有意に悪化し,三次元的骨構造解析では実験群の骨量が有意に減少していた.また,組織病理学的解析から,実験群では,空の骨小腔数増加と破骨細胞数減少を伴う壊死骨の有意な増大や生きている骨の有意な減少に加え,コラーゲン産生の有意な低下と著しい多形核白血球浸潤が認められ,BRONJ様病変は有意に悪化していた.さらに,免疫病理学的解析から,実験群ではBRONJ病変部結合組織内で全体のF4/80+MΦ数が有意に増加し,F4/80+CD38+M1MΦ数の有意な増加とF4/80+CD163+M2MΦ数の有意な減少が惹起されていた.以上から,移植した炎症性M1MΦは主にBRONJ病変部へ遊走・集積し,病変部結合組織内におけるMΦの極性をM1へ大きくシフトすることで破骨細胞の挙動にも悪影響を与えて病態を著しく悪化させており,病態形成機構にM1MΦと破骨細胞が深く関与する可能性が強く示唆された.
【参考文献】
1) 小堤涼平,黒嶋伸一郎,金子遥ほか.マクロファージの選択的枯渇と移植実験によるBRONJの病因解明と新規治療戦略基盤構築. 日補綴会誌 2022;14:149.
ビスホスホネート(BP)製剤関連顎骨壊死(BRONJ)は,口腔顎顔面領域特有の難治性硬軟組織疾患であり,その病因は不明で根治的な治療法や予防法も存在しない.我々の過去の基礎研究では,M2マクロファージ(MΦ)の移植やMΦの枯渇がマウスBRONJ様病変に与える影響を検索し,BRONJの病態形成機構にMΦの細胞挙動が関与する可能性を報告した1).本研究の目的は,炎症性M1MΦの細胞移植がマウスBRONJ様病変に与える影響を検索することにある.
【方法】
8週齢の雌性C57/BL6Jマウスを用い,抗がん剤とBP製剤の併用投与に抜歯を組み合わせてBRONJ様病変モデルマウスを作製した1).次に,マウス長管骨(n=10)から骨髄由来細胞を採取し,各種成長因子(M-CSF,LPS,IFN-γ)で処理してM1MΦを樹立した.BRONJ様病変モデルマウスの抜歯と同時に,樹立M1MΦを全身的に移植し(実験群,1.0×106個/マウス),対照群は生理食塩水移植群とした(n=7/各群).抜歯2週後に屠殺し,上顎,長管骨,脾臓,血清を採取して各種定量解析を行った.
【結果と考察】
抜歯創部は実験群と対照群の両者で全て開放していたが,創部開放状態は実験群の方が有意に悪化し,三次元的骨構造解析では実験群の骨量が有意に減少していた.また,組織病理学的解析から,実験群では,空の骨小腔数増加と破骨細胞数減少を伴う壊死骨の有意な増大や生きている骨の有意な減少に加え,コラーゲン産生の有意な低下と著しい多形核白血球浸潤が認められ,BRONJ様病変は有意に悪化していた.さらに,免疫病理学的解析から,実験群ではBRONJ病変部結合組織内で全体のF4/80+MΦ数が有意に増加し,F4/80+CD38+M1MΦ数の有意な増加とF4/80+CD163+M2MΦ数の有意な減少が惹起されていた.以上から,移植した炎症性M1MΦは主にBRONJ病変部へ遊走・集積し,病変部結合組織内におけるMΦの極性をM1へ大きくシフトすることで破骨細胞の挙動にも悪影響を与えて病態を著しく悪化させており,病態形成機構にM1MΦと破骨細胞が深く関与する可能性が強く示唆された.
【参考文献】
1) 小堤涼平,黒嶋伸一郎,金子遥ほか.マクロファージの選択的枯渇と移植実験によるBRONJの病因解明と新規治療戦略基盤構築. 日補綴会誌 2022;14:149.