講演情報

[P-79]アグマチンは顎顔面部の持続性炎症に伴う不安行動と中枢神経機能の変調を改善する

*岩本 佑耶1,2,3、長谷川 真奈1,3、岡本 圭一郎3、山村 健介3、藤井 規孝1,2 (1. 新潟大学医歯学総合病院 歯科総合診療科、2. 新潟大学大学院医歯学総合研究科歯科臨床教育学分野、3. 新潟大学大学院医歯学総合研究科口腔生理学分野)
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【目的】
 我々は実験動物を用いた顎顔面部の持続性炎症モデルにおいて,米発酵食品などに含まれるアグマチン(AGM)が不安状態を制御することを先に報告した.そこで今回は,AGMの投与量がこれらの不安行動および変調した脳機能に与える影響を調査した.
【方法】
 C57BL/6Jマウスの左側咬筋にComplete Freund's Adjuvant(CFA)を注入した顎顔面部炎症モデル(CFA群)と生食水を注入した非炎症群(Sham群)を作製した.また,両群に対して注入前10日間に予防的,注入後10日間に治療的にAGM(1, 30 mg/kg/day, i.p.)あるいは生食水を投与した.注入前(Pre)および注入後1,3,7,11日目に行動実験を実施し,不安行動は明暗箱,高架型十字迷路,オープンフィールド,社会性行動テスト,新規物体認識テストを用いてそれぞれを評価した.注入後12日目に灌流固定を行い,前帯状皮質(ACC),島皮質(IC),吻側延髄腹内側部(RVM)におけるFosBおよびアセチル化ヒストンH3(aH3)の発現を免疫組織化学的手法(IHC)で観察した.
【結果と考察】
 行動実験:AGMの予防投与において,不安行動はPreと比較して有意に増加したが,生食水と比較すると有意に軽減された.治療投与は不安行動を軽減し,効果は投与後3~11日目で認められた.AGMは投与量依存的に不安行動を有意に軽減し,Sham群においては行動に影響を及ぼさなかった.
 IHC解析:CFA群ではSham群と比べACC,IC,RVMのいずれにおいてもaH3およびFosB陽性細胞数が有意に増加した.治療投与では,各部位で陽性細胞数が投与量依存的に減少し,生食水投与と比較して有意に低値を示した.予防投与でもCFA投与後7~11日目において陽性細胞数が有意に減少していたが,治療投与と比較すると高値を示した.Sham群ではAGMによる影響は認められなかった.以上から,AGMは投与量依存的に顎顔面部の炎症が引き起こす不安行動を軽減し,予防的または治療的投与のいずれも有効であることが示された.また,そのメカニズムにはACC,IC,RVMにおけるエピジェネティック変化や神経興奮の増大の抑制が関与することが示唆された.