講演情報

[P-87]変形性顎関節症モデルマウス下顎頭の網羅解析によるバイオマーカーの探索

*大和田 碧1、四ツ谷 護1、菊地 済1、大熊 宏岳1、関根 秀志1 (1. 東京歯科大学クラウンブリッジ補綴学講座)
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【目的】
 変形性顎関節症は軟骨の変性,破壊を経て骨変化に至る疾患である.現在,骨変化を画像検査により確認することで確定診断が行われるが,診断可能な状態まで進行した重症例に対して有効な治療法はない1).そのため早期発見可能な検査法や疾患特異的な治療薬の開発が望まれる.変形性膝関節症の研究は広く行われているが,顎関節は構成成分や構造が膝関節とは異なるため,変形性顎関節においても同様の結果が得られるか否かは改めて調査する必要がある.本研究は変形性顎関節症モデルマウスから試料を採取し,網羅解析を用いて新規検査法や治療法開発につながるターゲットを検討することを目的とした.
【方法】
 12週齢の雄性C57BL/6Jマウスの片側下顎頭に関節円板部分切除術を施し変形性顎関節症モデルマウスを作出した.骨形態はマイクロCTにより観察した.骨変化に至った術後16週に下顎頭を採取しtotal RNAを得た.次世代シーケンサーを用いてバルクRNAシークエンスを実施し,試料毎のRNA発現を網羅的に定量化した.対照群には偽手術を行い,術後3日と16週に試料を採取し評価を行った.
【結果と考察】
 実験群では明らかな骨形態変化を認めた.RNAシークエンスの結果,3群それぞれが異なる遺伝子発現パターンを示した.対照群の術後3日ではTGF-β,BMPなどが増加していた.対照群の術後16週ではこれらのダウンレギュレーションが生じていたが,実験群では生じていなかった.対照群は加齢による変化であり,実験群は変形性顎関節症による異常なリモデリングであると考えられる.また実験群では変形性膝関節症のバイオマーカーとして有用とされるCOMP2)の増加がみられた.
【参考文献】
1) Tanaka E, Detamore MS, Mercuri LG. Degenerative Disorders of the Temporomandibular Joint: Etiology, Diagnosis, and Treatment. J Dent Res 2008;87:296–307.
2) Mishra A, Awasthi S, Raj S, et al. Identifying the role of ASPN and COMP genes in knee osteoarthritis development. J Orthop Surg Res 2019;14:337.