講演情報

[P-89]実験的な歯の喪失がマウス腸内細菌叢に及ぼす影響

*石田 えり1、大上 博史1、畠山 理恵1、荻野 貴嗣1、野田 健史郎1、横井 美有希2、吉田 光由2、津賀 一弘1 (1. 広島大学大学院医系科学研究科先端歯科補綴学、2. 藤田医科大学医学部歯科口腔外科学講座)
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【緒言】
 歯の喪失と認知機能低下は関連することが知られているが,そのメカニズムは未だ不明な点が多い1).近年,腸内細菌とアルツハイマー病との関連について報告が散見されており2),腸内細菌叢の変化と脳機能をはじめとした全身状態との関連が示唆されている.しかしながら,歯の喪失が腸内細菌叢に与える影響は不明である.そこで本研究では,実験的な歯の喪失が腸内細菌叢の変化に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 実験動物に,SAMP8マウス(雄性,2ヵ月齢)を用い,実験群は3ヵ月齢で両側上顎大臼歯を抜歯し,対照群は麻酔のみ行った.9ヵ月齢で行動実験(Barnesテスト)を実施し認知機能を評価した.その後糞便を採取し,16S rRNAアンプリコンシークエンスおよび腸内細菌代謝物を標的としたメタボローム解析を行った.
【結果と考察】
 Barnesテストの結果,ゴールであるエスケープホールを探索する時間や通過する回数の割合は実験群で低下していた.腸内細菌叢の解析結果では,α多様性には有意差を認めなかったものの,β多様性に有意差を認めた.メタボローム解析の結果,実験群では一部のポリアミン代謝物の変化を認めた.本研究の結果から実験的な歯の喪失は腸内細菌叢およびその代謝物を変化させることが明らかとなった.本研究の結果は,歯の喪失が認知機能低下に及ぼすメカニズムの理解につながる可能性がある.

【参考文献】
1) Nakamura T, Zou K, Shibuya Y, et al. Oral dysfunctions and cognitive impairment/dementia. J Neurosci Res 2021; 99(2): 518 – 528.
2) He Y, Li B, Sun D, et al. Gut Microbiota: Implications in Alzheimer's Disease. J Clin Med 2020 Jul; 9(7): 2042.