講演情報

[P-99]義歯治療が必要な患者の口腔機能低下症の実態:症型化による低下パターンの検討

*五十嵐 憲太郎1、飯塚 晃司1、今井 悠介2、鎌田 征之1、櫻井 萌絵1、藤井 あゆ1、山崎 亜莉紗1、鈴木 亜沙子1、河相 安彦1、伊藤 誠康1 (1. 日本大学松戸歯学部 有床義歯補綴学講座、2. 日本大学大学院松戸歯学研究科歯学専攻 有床義歯補綴学)
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【目的】
 口腔機能低下症(OHF)は,検査7項目中3項目以上低下した場合と診断し,地域歯科医院におけるOHFの該当率は地域在住高齢者と比較し高いことが報告されている1).一方,低下の組合せは99通り存在するため,症型化とそれに応じた治療管理が期待される.我々はOHFのうち咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能の4項目中3項目以上低下した場合(4項目モデル)も,フレイル等アウトカムの識別能は変化しないことを報告し,OHFの症型化を提唱している(図1).本発表の目的は,地域歯科来院患者のOHFについて4項目モデルでの症型の該当状況を明らかにし,既存下位症状との関連を検討することである.
【方法】
 研究参加に同意を得られた義歯治療が必要な高齢患者82名を対象とした.治療前にOHFの評価項目を測定し,咬合力,舌口唇運動機能,舌圧,咀嚼機能の4項目中3項目以上低下の5群(G1:咬合力が維持,G2:咀嚼機能が維持,G3:舌口唇運動機能が維持,G4:舌圧が維持,G5:4項目とも低下)に分類した.4項目モデルの該当と,既存7項目で4項目モデルに含まれない項目の該当状況および基本属性との関連についてカイ二乗検定で検討した.
【結果と考察】
 対象者の4項目モデルの該当は54人(65.8%)で,該当状況はG1が6人(全体の7.3%),G2が7人(8.5%),G3が3人(3.7%),G4が13人(15.9%),G5が25人(30.5%)であった.既存下位症状項目との比較は,口腔衛生状態不良(p=0.013)が有意に該当率が高かった.基本属性との関連は,年齢(p=0.029)は後期高齢者,性別(p=0.001)は女性が有意に高い割合を示し,症型分類(P=0.062)も難症例の該当率が高い傾向を示した.4項目モデルは加齢に伴う機能低下の出現頻度が高く,治療時の機能検査にも有用である可能性が示唆された.
【参考文献】
1) Iizuka K, Igarashi K, Meguro A, et al. Relationship between Oral Hypofunction, Treatment Difficulty Indices, and Frailty in Elderly Patients Requiring Prosthodontic Care. Int J Oral-Medical Sci 2022:273-281.