講演情報
[専門医-1]インプラントを用いて咀嚼機能と口腔関連QOLを回復した上顎片側遊離端欠損症例
*前田 正名1 (1. 北海道大学病院 クラウン・ブリッジ歯科)
【緒言】
咀嚼機能の低下は口腔関連QOLに大きな影響を与えるが,機能面のみならず,心理面(外見)や不快感もQOLとの関連性が高い評価項目である.固定性補綴装置による遊離端欠損への補綴歯科治療は,機能性,審美性,異物感に対して高い評価を得ることが期待される.今回,固定性ブリッジとインプラントを併用することで咀嚼機能の回復を図り,定量的な評価法で客観的に良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は64歳の女性.上顎ブリッジの揺れによる違和感と食事のしづらさを主訴に当科初診となった.上顎には全顎にわたり固定性ブリッジが装着されており,重度歯周病による支台歯の動揺と二次齲蝕による支台装置の脱離を認めたため,二次齲蝕と動揺に起因する固定性ブリッジの不備による咀嚼障害と診断した.保存困難な歯の抜歯により上顎右側が片側遊離端欠損となるため,部分床義歯とインプラントが選択可能な補綴装置として考えられた.早期の咬合支持獲得と審美性の回復を目的に部分床義歯を製作した上で,インプラント治療の可否を精査する方針とした.
上顎の固定性ブリッジを除去して暫間被覆冠を装着した.保存困難な歯を抜歯し,全部床義歯の製作過程に準じて咬合採得を行った後,最終補綴装置として固定性ブリッジを製作した.上顎右側遊離端欠損部には部分床義歯を製作し,右側の咬合支持獲得と審美性の回復を行った上で,インプラント治療の術前検査と診断を行い,部分床義歯治療ではなくインプラント補綴治療を行うこととなった.インプラント埋入4か月後に2次手術を行い,暫間被覆冠を装着した.カスタムインプレッションコーピングを用いて最終印象採得を行い,ジルコニアフレームにポーセレンをレイヤリングしたセメント固定式オールセラミックブリッジを最終上部構造として装着した.
【経過ならびに考察】
治療終了後3年が経過した現在まで3か月に一度の定期管理を行い,インプラント周囲辺縁骨吸収や上部構造の脱離・破損は認められていない.OHIP-J54スコアは77から11まで減少し,咀嚼機能検査結果は205mg/dLと,定量的評価からも治療結果は良好であることが分かった.部分床義歯装着中は口腔内異物感を訴えていたが,インプラント支持型固定性上部構造を装着したことで,異物感の改善と食事の質の向上が認められたと考えられた.
(発表に際して患者の同意を得た)
咀嚼機能の低下は口腔関連QOLに大きな影響を与えるが,機能面のみならず,心理面(外見)や不快感もQOLとの関連性が高い評価項目である.固定性補綴装置による遊離端欠損への補綴歯科治療は,機能性,審美性,異物感に対して高い評価を得ることが期待される.今回,固定性ブリッジとインプラントを併用することで咀嚼機能の回復を図り,定量的な評価法で客観的に良好な結果が得られたので報告する.
【症例の概要・治療内容】
患者は64歳の女性.上顎ブリッジの揺れによる違和感と食事のしづらさを主訴に当科初診となった.上顎には全顎にわたり固定性ブリッジが装着されており,重度歯周病による支台歯の動揺と二次齲蝕による支台装置の脱離を認めたため,二次齲蝕と動揺に起因する固定性ブリッジの不備による咀嚼障害と診断した.保存困難な歯の抜歯により上顎右側が片側遊離端欠損となるため,部分床義歯とインプラントが選択可能な補綴装置として考えられた.早期の咬合支持獲得と審美性の回復を目的に部分床義歯を製作した上で,インプラント治療の可否を精査する方針とした.
上顎の固定性ブリッジを除去して暫間被覆冠を装着した.保存困難な歯を抜歯し,全部床義歯の製作過程に準じて咬合採得を行った後,最終補綴装置として固定性ブリッジを製作した.上顎右側遊離端欠損部には部分床義歯を製作し,右側の咬合支持獲得と審美性の回復を行った上で,インプラント治療の術前検査と診断を行い,部分床義歯治療ではなくインプラント補綴治療を行うこととなった.インプラント埋入4か月後に2次手術を行い,暫間被覆冠を装着した.カスタムインプレッションコーピングを用いて最終印象採得を行い,ジルコニアフレームにポーセレンをレイヤリングしたセメント固定式オールセラミックブリッジを最終上部構造として装着した.
【経過ならびに考察】
治療終了後3年が経過した現在まで3か月に一度の定期管理を行い,インプラント周囲辺縁骨吸収や上部構造の脱離・破損は認められていない.OHIP-J54スコアは77から11まで減少し,咀嚼機能検査結果は205mg/dLと,定量的評価からも治療結果は良好であることが分かった.部分床義歯装着中は口腔内異物感を訴えていたが,インプラント支持型固定性上部構造を装着したことで,異物感の改善と食事の質の向上が認められたと考えられた.
(発表に際して患者の同意を得た)