講演情報

[課題5]睡眠時の血糖値が睡眠時ブラキシズムに与える影響の検討

*谷脇 竜弥1、大倉 一夫1、鈴木 善貴1、吉原 靖智1、新開 瑞希1、小澤 彩1、柴垣 あかり1、渡邊 亮友1、大島 正充1、細木 真紀1、生田目 大介1、田島 登誉子1、松香 芳三1 (1. 徳島大学口腔科学研究科口腔科学専攻顎機能咬合再建学分野)
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【目的】 
 睡眠時ブラキシズム(SB)のバイオマーカーとなる律動性咀嚼筋活動(RMMA)は,夜間の微小覚醒に伴う非特異的覚醒反応として咀嚼筋群が活動するものと考えられている.一方,睡眠中の低血糖により交感神経活性の亢進が認められる1)など,睡眠に影響を及ぼす. 本研究では,睡眠中の血糖値変動とRMMA発現の関連性を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 SBの自覚や指摘されたことのある21~54歳の成人9名を対象として,携帯型ポリソムノグラフと携帯型持続血糖モニター装置(図1)を用いて脳波,右側咬筋活動,脈拍,SpO2, 血糖値を測定した.測定期間は2週間で,前半7日間は非介入,後半7日間は食生活習慣指導を行い,朝食,昼食,夕食の3食の糖質量は指導前と同程度とし,砂糖入り飲料・飲酒・糖質の多い間食を禁止し,低グルセミック・インデックス食品を間食として摂取した.測定開始後7,14日目のデータを解析対象とし,介入前後の睡眠時の血糖値変動,1時間当たりのRMMA回数の比較を行った.さらに,自律神経活動の評価として,脈拍波形から心拍間の時間間隔であるRR間隔と低周波成分(LF)と高周波成分(HF)を抽出し,周波数解析を行うことでLF/(LF+HF)を算出し,介入前後で比較した.統計解析手法はWilcoxon符号付順位和検定(p<0.05)を用いた.
 本研究は徳島大学病院生命科学・医学系研究倫理審査委員会(承認番号576-8)の承認を受けている.
【結果と考察】 
 指導後は,睡眠時の血糖値変動が有意に減少し(Mean±SD:13.9±9.0mg/dL→4.8±2.4mg/dL),RMMAエピソード数も有意に減少した(9.6±3.4回/時→6.6±2.6回/時).さらに,RR間隔の有意な増加(0.96±0.09秒→1.09±0.09秒)とLF/(LF+HF)の有意な減少(0.41±0.09→0.36±0.06)が認められ(図2),副交感神経活動の亢進と交感神経活動の減少が認められた.以上から,睡眠時の血糖値変動が自律神経活動に影響を及ぼし,SBの発生に関連している可能性が示唆された.
【参考文献】
1) 松下由美,高田康徳,松田藍 ほか. 持続血糖モニターとホルター心電図により夜間低血糖時の自律神経活動変化を解析し得た1型糖尿病の1例.糖尿病 2016;59:475-481