講演情報
[課題6]後期高齢者における義歯の状態と要介護移行との関連:OHSAKA study
*武内 聡子1、豆野 智昭1、吉備 皓太郎1、池邉 一典1 (1. 大阪大学大学院歯学研究科 有床義歯補綴学・高齢者歯科学講座)
【目的】
歯の喪失は,高齢者の健康寿命に負の影響を及ぼすことが知られている.しかし,欠損補綴治療である可撤性義歯(以下,義歯)が,健康寿命に及ぼす影響は検討されていない.本研究では,義歯の使用ならびに適合状態と要介護状態への移行との関連を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は,2018年4月1日から2020年3月31日に大阪府後期高齢者医療歯科健康診査を受診した者のうち,要介護状態の判定を受けていない者を対象とした.残存歯数に基づき,対象者を4群(20歯以上,10–19歯,1–9歯,0歯)に分類し,義歯の状態(使用の有無ならびに適合状態),診査日から2024年3月31日までの要介護状態の判定の有無,ならびに認定日を調査した.なお,生活保護認定を受けた者,転出した者,ならびに死亡した者は,その時点を打ち切り日とした.Cox比例ハザード分析を用いて,年齢,性別,BMI,既往歴,要支援認定の有無,喫煙状態,歯周状態を調整し,20歯未満群における義歯の状態と要介護移行の有無との関連を検討した.
【結果と考察】
分析対象者150,781人(男性65,265人,女性85,516人,平均年齢79.3歳)のうち,平均観察期間4.7年の間で,20,973人(13.9%)が,要介護状態と判定された.残存歯数群の内訳は,20歯以上群89,278人,10–19歯群36,178人,1–9歯群19,426人,0歯群5,899人であり,要介護移行をエンドポイントとした5年累積生存率は,20歯以上群91.0%,10–19歯群87.5%,1–9歯群84.3%,0歯群80.6%であった(図).残存歯数群別での多変量解析の結果を表に示す.義歯適合良好を基準としたハザード比(95%信頼区間)は,10–19歯群の義歯適合不良で1.08(1.01–1.16),1–9歯群の義歯適合不良で1.08(1.01–1.17)および義歯不使用で1.12(1.03–1.22),0歯群の義歯適合不良で1.15(1.01–1.31)および義歯不使用で1.13(1.01–1.29)で,それぞれ有意であった(表).これらの結果より,残存歯数が10歯未満の後期高齢者において,義歯の使用ならびに適合状態は,要介護状態への移行に関連することが明らかとなった.
歯の喪失は,高齢者の健康寿命に負の影響を及ぼすことが知られている.しかし,欠損補綴治療である可撤性義歯(以下,義歯)が,健康寿命に及ぼす影響は検討されていない.本研究では,義歯の使用ならびに適合状態と要介護状態への移行との関連を検討することを目的とした.
【方法】
本研究は,2018年4月1日から2020年3月31日に大阪府後期高齢者医療歯科健康診査を受診した者のうち,要介護状態の判定を受けていない者を対象とした.残存歯数に基づき,対象者を4群(20歯以上,10–19歯,1–9歯,0歯)に分類し,義歯の状態(使用の有無ならびに適合状態),診査日から2024年3月31日までの要介護状態の判定の有無,ならびに認定日を調査した.なお,生活保護認定を受けた者,転出した者,ならびに死亡した者は,その時点を打ち切り日とした.Cox比例ハザード分析を用いて,年齢,性別,BMI,既往歴,要支援認定の有無,喫煙状態,歯周状態を調整し,20歯未満群における義歯の状態と要介護移行の有無との関連を検討した.
【結果と考察】
分析対象者150,781人(男性65,265人,女性85,516人,平均年齢79.3歳)のうち,平均観察期間4.7年の間で,20,973人(13.9%)が,要介護状態と判定された.残存歯数群の内訳は,20歯以上群89,278人,10–19歯群36,178人,1–9歯群19,426人,0歯群5,899人であり,要介護移行をエンドポイントとした5年累積生存率は,20歯以上群91.0%,10–19歯群87.5%,1–9歯群84.3%,0歯群80.6%であった(図).残存歯数群別での多変量解析の結果を表に示す.義歯適合良好を基準としたハザード比(95%信頼区間)は,10–19歯群の義歯適合不良で1.08(1.01–1.16),1–9歯群の義歯適合不良で1.08(1.01–1.17)および義歯不使用で1.12(1.03–1.22),0歯群の義歯適合不良で1.15(1.01–1.31)および義歯不使用で1.13(1.01–1.29)で,それぞれ有意であった(表).これらの結果より,残存歯数が10歯未満の後期高齢者において,義歯の使用ならびに適合状態は,要介護状態への移行に関連することが明らかとなった.