講演情報
[P-6]江戸時代の鼻部および眼窩部補綴装置の当時の材料と方法での再現
*吉田 和也1 (1. 独立行政法人 国立病院機構 京都医療センター 歯科口腔外科)
【目的】
江戸時代の日本では感染症や外傷により鼻や眼球を欠損した患者が多数存在したとされるが,当時実際に用いられた顔面補綴装置の実物は現存せず,その製作技法は不明である1.本研究の目的は,江戸時代に使用可能であった材料および工芸技法を用いて鼻部および眼窩部補綴装置を再現し,その成立可能性を検討することである.
【方法】
実際の患者に本研究を行うことは倫理上問題となるため,演者の鼻および眼球の欠損を想定して顔面補綴装置を製作した.
基材には,江戸期の木床義歯に用いられていたツゲ材を使用した.鼻部補綴装置には能面や仏像制作技法を応用し,のみや彫刻刀で形態を整え,日本画用絵の具で彩色し,内面は摺漆を施した2(図1).
眼窩部補綴装置には仏像の玉眼技法に基づき,日本産水晶を砥石で研磨し,人工眼を製作,嵌入した3(図2).内面には摺漆を施し,保持方法として鼻部補綴装置には糸固定,眼窩補綴装置には当時利用可能であったグルテンの可能性を検討した.
【結果と考察】
再現された鼻部および眼窩補綴装置はいずれも軽量で,形態的・審美的に実用性を有すると考えられた.眼窩補綴装置では,玉眼により立体感と自然な外観が得られた.
江戸時代の材料と工芸技法を用いて,鼻部および眼窩部補綴装置を製作することは十分可能であり,日本において近代歯科医学以前から審美的に良好な顎顔面補綴技術が成立していた可能性が示唆された.
【参考文献】
1. Yoshida K. Nasal and orbital epitheses in Japan until early modern times. J Hist Dent 2024; 72: 243-258.
2. Yoshida K. Recreating wooden nasal epithesis using 17th century materials and techniques. J Hist Dent 2025; 73: 50-62.
3. Yoshida K. Reproducing an Edo period orbital epithesis with wood and crystal. J Hist Dent 2026 in press.
江戸時代の日本では感染症や外傷により鼻や眼球を欠損した患者が多数存在したとされるが,当時実際に用いられた顔面補綴装置の実物は現存せず,その製作技法は不明である1.本研究の目的は,江戸時代に使用可能であった材料および工芸技法を用いて鼻部および眼窩部補綴装置を再現し,その成立可能性を検討することである.
【方法】
実際の患者に本研究を行うことは倫理上問題となるため,演者の鼻および眼球の欠損を想定して顔面補綴装置を製作した.
基材には,江戸期の木床義歯に用いられていたツゲ材を使用した.鼻部補綴装置には能面や仏像制作技法を応用し,のみや彫刻刀で形態を整え,日本画用絵の具で彩色し,内面は摺漆を施した2(図1).
眼窩部補綴装置には仏像の玉眼技法に基づき,日本産水晶を砥石で研磨し,人工眼を製作,嵌入した3(図2).内面には摺漆を施し,保持方法として鼻部補綴装置には糸固定,眼窩補綴装置には当時利用可能であったグルテンの可能性を検討した.
【結果と考察】
再現された鼻部および眼窩補綴装置はいずれも軽量で,形態的・審美的に実用性を有すると考えられた.眼窩補綴装置では,玉眼により立体感と自然な外観が得られた.
江戸時代の材料と工芸技法を用いて,鼻部および眼窩部補綴装置を製作することは十分可能であり,日本において近代歯科医学以前から審美的に良好な顎顔面補綴技術が成立していた可能性が示唆された.
【参考文献】
1. Yoshida K. Nasal and orbital epitheses in Japan until early modern times. J Hist Dent 2024; 72: 243-258.
2. Yoshida K. Recreating wooden nasal epithesis using 17th century materials and techniques. J Hist Dent 2025; 73: 50-62.
3. Yoshida K. Reproducing an Edo period orbital epithesis with wood and crystal. J Hist Dent 2026 in press.


