講演情報

[P-108]咀嚼刺激により誘導される咬筋由来マイオカインの網羅的トランスクリプトーム解析

*乾 志帆子1、大野 充昭2、窪木 拓男2、前川 賢治1 (1. 大阪歯科大学歯学部欠損歯列補綴咬合学講座、2. 岡山大学学術研究院医歯薬学域インプラント再生補綴学分野)
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【目的】
 咀嚼は口腔機能の中核を担う運動であるが,咀嚼筋の収縮を介して筋由来分泌因子(マイオカイン)が誘導される可能性が示唆されている.しかし,咀嚼刺激により誘導される咬筋由来分泌因子の全体像は十分に解明されていない.本研究では,咀嚼誘発性咬筋活動によって発現が変動する分泌関連遺伝子をbulk RNA-sequence (RNA-seq)により網羅的に同定し,その生物学的特性を明らかにすることを目的とした.
【方法】
 7週齢雄性BALB/cCrSlcマウスを円筒形チューブ内で4時間拘束した.実験群ではチューブ前端にプラスチック片を挿入して自発的咀嚼行動を誘導し,対照群では挿入せず安静拘束とした(各群n=3).拘束前に1時間の馴化期間を設け,咀嚼モデルではプラスチック片を2時間ごとに交換した.拘束終了後に咬筋からtotal RNAを回収し,bulk RNA-seq解析を行い,群間比較による発現変動遺伝子解析およびクラスタリング解析を実施した.
【結果と考察】
 Bulk RNA-seq解析の結果,咀嚼刺激群の咬筋の遺伝子発現プロファイルは対照群と比較して明確な変化を示し(図1),主成分分析により両群は明確に分離した.発現変動遺伝子解析では,炎症応答,細胞外マトリックス (ECM)リモデリング,血管新生に関連する遺伝子が有意に変動していた(図2).これらには,ケモカイン,炎症性サイトカイン関連分子,ECM分解酵素,急性期反応蛋白,成長因子関連分子など,分泌型タンパク質として機能しうる遺伝子群が含まれていた.以上より,咀嚼刺激は咬筋において,マイオカインを含む分泌因子の発現制御を介した特異的かつ組織特異性の高い分子応答を誘導し,生理学的に意義ある生理機能調節や恒常性維持に関与する可能性が示唆された.今後,機能解析および全身作用の検証が必要である.
【参考文献】
1) Chaweewannakorn C, Nyasha M, Chen W, et al. Exercise-evoked intramuscular neutrophil-endothelial interactions support muscle performance and GLUT4 translocation: a mouse gnawing model study. J Physiol. 2020 Jan;598(1):101-122.