講演情報

[P-131]Danshenの投与が2型糖尿病モデルマウスの唾液分泌機能に及ぼす効果

*尾﨑 雅歩1、宗政 翔1、野代 知孝1、向坊 太郎1、細川 隆司1、正木 千尋1 (1. 九州歯科大学 口腔再建補綴学分野)
PDFダウンロードPDFダウンロード
【目的】
 糖尿病患者では,しばしば口腔乾燥症を合併することが知られている.口腔乾燥症は,義歯の維持困難や円滑な咀嚼および嚥下の阻害などを引き起こし,補綴治療を行う上でのリスクとなるため,治療法の確立が急務である.唾液分泌機能の維持には,水チャネルタンパクAquaporin-5の発現調節や唾液腺血流動態が重要であることが報告されており,生薬であるTansinolがこれらの機能に関わっている可能性が示唆されている.そこで本研究ではTansinolを多く含む漢方薬Danshenの糖尿病における唾液分泌機能の効果を2型糖尿病モデルマウスKK-Ayを用いて検討することを目的とした.
【方法】
 本研究では,オスの2型糖尿病モデルマウスKK-Ayを用いた.7週齢時より,対照群には通常飲水を,Danshen投与群にはDanshen懸濁液をそれぞれ3週間自由摂取により経口投与し,10週齢にて各種解析を行った.Ex vivo唾液腺灌流実験では,摘出した顎下腺および舌下腺を用い,コリン作動薬カルバコール(0.3 µM)刺激下での唾液分泌量を測定した.さらに,in vivo唾液分泌実験として,ピロカルピン10 mg/kgを腹腔内投与し,顎下腺,舌下腺および耳下腺からの唾液分泌機能を評価した.統計解析にはStudent’s t-testを用い,有意水準はp < 0.05とした.
【結果と考察】
 血糖値はコントロール群とDanshen投与群との間に有意な差を認めなかった.体重については投与群で減少傾向がみられたものの,統計学的有意差は認められなかった.また,顎下腺,舌下腺および耳下腺の唾液腺重量はいずれも群間差を示さなかった.Ex vivo唾液腺灌流実験においては,顎下腺および舌下腺の唾液分泌量に有意な変化は認められなかった.一方,in vivo唾液分泌実験では,舌下腺からの唾液分泌量に差はみられなかったものの,Danshen投与群では顎下腺および耳下腺からの唾液分泌量がそれぞれ約64%,約50%有意に増加した.これらの結果より,Danshenは唾液腺自体の分泌能を直接的に高める作用は限定的である一方で,血流改善や自律神経調節などの全身性作用を介し,唾液分泌反応を増強する可能性が示唆された.