講演情報

[P-21]全部床義歯装着者の咀嚼開始時における食品保持部位の再現性に関する検討

*寺尾 陽一1、中村 健太郎1、山口 大輔1、木本 統1 (1. 愛知学院大学歯学部高齢者・在宅歯科医療学講座)
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【目的】 
 全部床義歯の臼歯部人工歯排列は,義歯の安定性や咀嚼能率に影響する重要な要素である.これまで,われわれは排列位置に着目した臨床報告をしている1)が,咀嚼時に食品が最初に保持・破断される部位については十分に検討しているとは言えない.そこで本研究では,咀嚼開始時に食品が保持される部位を主咀嚼部位と定義し,全部床義歯装着者を対象として,その被験者内再現性および被験者間差を解析することを目的とした.
【研究方法】
 1.被験者 
 意思疎通が可能で咀嚼障害を有さず同意が得られた全部床義歯装着者10名を対象とし,愛知学院大学歯学部倫理委員会の承認(#766)を得た.
 2.主咀嚼部位の測定
 直径3.4mm,長さ3mmのストッピングを被験者の舌中央部に配置し,習慣性咀嚼側で1回咬合させて下顎義歯上のストッピング保持部を確認し,主咀嚼部位とした.その後,咬合平面と模型基底面が平行になるよう作製したシリコーンパテ模型と義歯を一体化し,歯接触分析装置(バイトアイ;ジーシー,東京,日本)を用いて定点撮影した.得られた撮影画像から動的数学ソフトウェア(GeoGebra Geometry;GeoGebra GmbH,リンツ,オーストリア)を用いてストッピングの重心を算出し,義歯後縁部を原点としてその重心を二次元座標(x, y)として数値化した.ストッピング保持部の測定は被験者ごとに5回実施した.
 3.分析
 二次元座標から同一被験者内のばらつきを示す個人内標準偏差,被験者間の個人差を示す被験者間標準偏差を評価指標として算出した.相対的再現性を補足的に評価する目的で級内相関係数(ICC)としてx方向およびy方向を算出した(表).
【結果と考察】
 1.主咀嚼部位の個人内標準偏差は小さく,各被験者内で高い再現性が認められることから一定の部位で食品を保持し咀嚼を開始すると考えられた.
 2.被験者間標準偏差は個人内変動に比べて大きく,主咀嚼部位は被験者ごとに異なると考えられた.
 3.全被験者の主咀嚼部位は頬棚部に位置していたことから,頬棚が一次的圧負担域として機能していることが示唆された.
【結論】
 主咀嚼部位は全部床義歯装着者に固有で再現性の高い特性が認められ,人工歯排列の指標となり得る.
【参考文献】
 1)寺尾陽一ほか.主機能部位咬合論を応用し咀嚼機能回復した全部床義歯症例.日補綴会誌 2025;17・134回特別号:345.