講演情報

[P-40]上顎顎義歯を積層造形法により複製して従来法と同等の機能を得た一症例

*中澤 和真1、竜 正大1、上田 貴之1 (1. 東京歯科大学 老年歯科補綴学講座)
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【緒言】 
 上顎顎義歯は,顎欠損形態に依存して複雑になることがある.CAD/CAM法は形態の再現性に優れるため,複製義歯の製作にも適している.積層造形法は切削加工法と比べ,形態が複雑かつ高径のある上顎顎義歯の複製にも適すると考えられる.   
 今回,従来法で製作した上顎顎義歯の複製に積層造形法を用いて,良好な結果を得た症例を報告する.
【症例の概要・治療内容】
 82歳男性.咀嚼困難感を主訴に来院した.2年前に他院で上顎歯肉がんに対する上顎部分切除術を受け,顎義歯を装着したとのことであった.上顎右側中切歯から左側犬歯が残存し,顎欠損が上顎右側側切歯部から上顎結節相当部に認められ,口腔と鼻腔および上顎洞が交通していた.下顎右側大臼歯以外は残存していた.義歯は咬耗が著しく,度重なる修理により床形態にも不備があったため,従来法により上顎顎義歯を新製した.
 製作した顎義歯を装着した状態での会話明瞭度は「2.時々わからない言葉がある」であり,含嗽時に水の鼻漏出を認めた.グルコース溶出量による咀嚼機能検査の結果は144 mg/dL,感圧フィルムによる咬合力検査の結果は341.1Nであった.顎義歯の破折に対する不安から,予備の顎義歯製作を希望されたため,積層造形法を使用し,製作した顎義歯の複製を行うこととした.
 モデルスキャナーにて顎義歯をスキャンするとともに,口腔内スキャナーにて上下顎残存歯のスキャンを行った.顎義歯のデータから義歯床および人工歯を3Dプリンターで造形し,常温重合レジンで接着した.また,残存歯のデータから作業用模型を造形後,支台装置を製作した.支台装置を口腔内で義歯床に組込み,義歯を完成させた.積層造形義歯装着時の会話明瞭度や水の鼻漏出は従来法義歯装着時と同程度であった.咀嚼機能検査の結果は153mg/dL,咬合力は595.6Nとなった.
【経過ならびに考察】
 本症例は,複雑な形態の上顎顎義歯をスキャンし積層造形したことで,口腔内で欠損腔の印象採得を行うことなく従来法義歯と同形態の複製義歯が製作され,従来法義歯装着時と同等の機能が得られた.顎義歯は,顎欠損部の形態変化による再製作の頻度が多いが,従来法は欠損腔への印象材迷入や撤去時の粘膜損傷などのリスクがある.本法の応用は,それらのリスクを回避して顎義歯を製作でき,有用であると考えられた.
 なお発表にあたり,本人から書⾯にて同意を得た。