講演情報

[専門医-1]下顎辺縁切除術と骨延長術を併用し機能回復を図ったインプラント補綴症例

*佐藤 康太郎1 (1. 名古屋大学大学院医学系研究科頭頸部感覚器外科学講座 顎顔面外科学)
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【緒言】
 顎骨腫瘍に対する骨切除後の補綴治療は困難になることがある.本発表ではエナメル上皮腫に対して下顎辺縁切除術後,早期に骨延長を開始し,のちにインプラント補綴治療を施行した症例を供覧する.
【症例の概要・治療内容】
 32歳女性.2010年2月上旬,下顎左側前歯部から臼歯部に違和感を自覚し,近在総合病院歯科口腔外科を受診した.組織試験採取の結果,エナメル上皮腫の診断であった.同年3月10日,同部に対する加療のため当科を紹介受診した.同年7月14日,下顎辺縁切除術,歯槽骨切り術を施行し,同部に骨延長装置を装着した.術7日後から骨延長を開始し,計15mm延長した.2011年1月28日に延長装置を撤去した.同年7月6日に顎堤形成術,腸骨海綿骨移植術を,2012年1月11日には口腔前庭拡張術,プレート除去術を施行した.シミュレーションソフトにより埋入位置を確認し,┌1345相当部に合計4本のフィクスチャーを埋入し1┬2相当部はポンティックにすることとした.同年7月に一次手術を施行(ブローネマルクシステム MkⅢ タイユナイト, 直径3.75mm, 長さ13mm)した.同年11月に二次手術をし,12月にはプロビジョナルレストレーションを装着した.2013年5月,インプラント支持の陶材焼付ブリッジを装着した.
【経過ならびに考察】
 2023年5月10日に左側咬筋部に開口時痛を自覚したため筋電計で測定したところ強さは15.1%,回数は8.1回/hと歯ぎしりの診断で口腔内装置を製作し,その後症状は改善した.咀嚼スコア1)は90点で,グミゼリーを用いた咀嚼能力検査では170mg/dlであった. 本症例は下顎辺縁切除後早期に骨延長を開始し,垂直的に15 mmの延長ができた.ただ,結果的には垂直的骨量が若干不足し,骨移植術をすることになった点,骨延長器撤去の際にそれを同時に計画していれば手術回数が減る可能性があった点は反省すべきである.インプラント体に対する過度の側方力はオッセオインテグレーションを阻害する可能性が示唆されているため咬頭傾斜角は緩やかにするように調整した.治療終了後,腫瘍の再発はなく,審美ならびに機能に満足が得られている.

【参考文献】
1) 佐藤裕二,石田栄作,皆木省吾,赤川安正,津留宏道.総義歯装着者の食品摂取状況.補綴誌 1988;32:774–779.