講演情報

[課題8]フルデジタル化が進む補綴臨床における相補下顎運動の意義

*荻原 久喜1、重本 修伺1、木原 琢也1、井川 知子1、平林 里大1、重田 優子1、小川 匠1 (1. 鶴見大学 歯学部 クラウンブリッジ補綴学講座)
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【目的】
 歯科のデジタル化に伴い,顎運動情報を補綴装置に反映させる試みが報告されている.顎運動は,上顎に対する下顎の運動である下顎運動(MM)と,下顎に対する上顎の相対運動である相補下顎運動(cMM)に区別される(図1)1).研究ではMMを主に用いるが,補綴臨床ではゴシックアーチ描記,調節性咬合器,FGPテクニック等MM,cMMの双方を利用する術式も多い.しかし両者の違いは十分に認識されてこなかった.本研究では,補綴装置製作のフルデジタル化に必須な,MMとcMMの関係および対応する全運動軸(KA)と相補全運動軸(cKA)の特徴を明確にすることを目的とした.
【方法】
 顎機能健常者27名(男性7名,女性20名,53.0±14.6歳)を対象に,矢状面限界運動(SAG),側方滑走運動(LAT),前後滑走運動(PRO)を測定しMMとcMMを算出した.KAとcKAはShigemotoら2)に準じて求めた.各運動のMM経路と反転cMM経路の最大距離,KAとcKAの直線性,平行性,運動経路の厚み,最大移動量と両軸の位置関係を解析した.有意水準5%で統計解析を行った.
【結果と考察】
 MMと反転cMMの経路は咬頭嵌合位付近で近似したが,両者は単純な点対称ではなかった.並進成分を主とするPROでは対称性が高い,一方回転成分を含むSAGとLATでは差異が大きく,運動成分が対称性に影響することが示唆された.KAは下顎頭付近,cKAは関節結節付近に位置し,両者の空間的位置は一致しなかった(図2).以上より,デジタル咬合器において,上顎補綴装置の製作にはアルコン型でKAを,下顎補綴装置にはコンダイラー型でcKAを顆頭間軸とすることが適切と考えられる.仮想空間で動的咬合を再現しフルデジタルで補綴装置を設計・製作するためには,MMとcMM双方の理解が不可欠である.
【参考文献】
1)坂東永一,久保郁子,中野寿文ほか.滑面板の一症例.顎顔面補綴 1981;4:67-69.
2)Shigemoto S, Bando N, Nishigawa K et al. Effect of an exclusion range of jaw movement data from the intercuspal position on the estimation of the kinematic axis point. Med.Eng.Phys 2014; 36(9): 1162-1167.