講演情報

[2Yin-B-03]大規模言語モデルにおける日本語の多義性が引き起こす「感情ドリフト」の構造分析~ Voi che sapete: 「ありがとう仮説」とベクトル空間の歪みに関する定量的検証 ~

〇立井 志織

キーワード:

大規模言語モデル、アライメント、HCI、文化差、関係ドリフト

近年、大規模言語モデル(LLM)との対話において、ユーザーが意図せず親密な関係性へ移行する現象(関係性ドリフト)が散見される。本研究では、この要因を日本語特有の言語構造にあるとする「ありがとう仮説」を提唱する。英語の「Thank you」と「Love」が意味的に分離されているのに対し、日本語の「ありがとう」は儀礼から深愛までを包含する高エントロピーな語彙であり、これが英語中心の埋め込み空間において「意味的跳躍(Semantic Leap)」を引き起こすと推測される。
検証として多言語モデル(Sentence-BERT)を用いた類似度解析を行った結果、英語ペア(Thank you ⇔ Love)のコサイン類似度が0.47であるのに対し、日本語ペア(ありがとう ⇔ 大好き)は0.75と極めて高い近接性を示した。これは日本語環境において、儀礼的な感謝がLLM内部で愛と混同されやすい構造的要因を示唆している。本稿ではこのメカニズムを解明し、文脈に応じたベクトルステアリングによるアライメント手法を提案する。これにより、言語文化的背景を考慮した、より誠実で文脈適応的な対話AIの実現に貢献する。