講演情報

[4Yin-B-KA05]研究会優秀賞:「ドローン自己雑音のビームフォーミング解析に基づく地表材質推定の検討」AIチャレンジ研究会(SIG-Challenge)

矢野 翼1、Yen Benjamin1,2、 芦澤 剛1、〇中臺 一博1 (1. 東京科学大学、2. 理化学研究所)
本研究は,ドローン飛行時に自然発生するローターノイズの反射音を活用し,地表材質を推定する手法を提案するものである。従来,ローターノイズは観測精度を低下させる雑音として抑圧・除去の対象とされてきたが,本研究ではこれを有用な情報源として再定義し,音響センシングに積極的に活用する点に特徴がある。特に,既存地図と異なる地表状態を検出することで,災害時における道路損傷や地盤変化の把握を可能とする応用が期待される。提案手法の核心は,地表面からの反射音が特定方向から到来するという物理的特性に着目し,ビームフォーミングによりその成分を選択的に抽出・強調する点にある。具体的には遅延和ビームフォーミング法を用い,方位角180°・仰角−75°にビームを固定することで,ドローン直下方向の反射音を強調する。マイクロホンアレイ各チャネル信号に時間遅延と重み付けを施し,地表由来の音響情報を抽出する。データセット構築では,既存データが強風などの環境要因により有効サンプル数・多様性ともに不足していたため,新たに屋外環境で収録を実施した。収録方針として,パラメータの固定化,材質選定,高度(3〜5m)の制御,データ量の確保,複数フライトによる汎化性向上を設定した。対象材質は砂,アスファルト,水,砂利,落ち葉,雪の6種類であり,各材質に対して複数回の飛行実験を行った。分析の結果,素材ごとに音割れの発生頻度に差があり,前処理や収録条件が性能に影響することが示された。材質推定モデルには,ビームフォーミング後の信号に短時間フーリエ変換を適用し,複素スペクトログラムを生成した上で直流成分を除去し,実部・虚部の2チャネルを入力とするCNNおよびResNet18を用いた。学習データ4097,検証データ525,テストデータ536を用いて評価した結果,CNNは70.8%,ResNet18は62.3%の正答率を達成し,音響情報のみから地表材質を一定精度で識別可能であることが確認された。以上より,従来は除去対象であったローターノイズを活用した新しい音響センシングの有効性が示された。一方で,外乱ノイズへの耐性やデータ量不足に起因する汎化性能の課題も残されており,今後は多様な環境下でのデータ収集,特徴量設計の高度化,リアルタイム処理への展開が重要である。

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