[VYS-01]IL-2Rg欠損が免疫・微生物・代謝系に与える影響とX-SCIDブタへの胎生期造血幹細胞移植の有用性評価
○伊藤 駿1, 鈴木 俊一2, 淵本 大一郎2, 大西 彰3, 板野 理4, 北郷 実5, 松田 祐子5, 盛田 彰太郎1, 古川 睦実1, 新實 香奈枝1, 宇佐美 克紀1, 渡邊 康一1, 麻生 久1, 野地 智法1(1.東北大院農, 2.農研機構生物機能部門, 3.日本大生資科, 4.国際医療福祉大医, 5.慶應義塾大医)
【目的】IL-2受容体γ鎖(IL-2Rg)を責任遺伝子とするX連鎖重症複合免疫不全症(X-SCID)は,重篤な先天性免疫不全症である.X-SCID患者に対する治療として,造血幹細胞移植が行われているが,移植患者の半数以上が,移植後も免疫グロブリンの補充を余儀なくされるなど,現行治療のさらなる改良が期待されている.我々は,IL-2Rg欠損ブタ(X-SCIDブタ)を用いることで,X-SCID患者がもたらす免疫異常を臓器レベルで解析するとともに,X-SCID患者に対する新たな治療概念の構築を目指してきた.【方法】IL-2Rg遺伝子を欠損することによる免疫・微生物・代謝系での機能異常を,野生型ブタとX-SCIDブタの比較することで評価した.また,胎生期のX-SCIDブタに野生型ブタ由来の造血幹細胞を移植し,その有効性を評価した.【結果・考察】IL-2Rg遺伝子の欠損がもたらす影響は,リンパ組織の形成異常といった免疫系に与えるもののみでなく,微生物および代謝系にも認められた.一方で,X-SCIDブタがもたらす異常な症状の多くは,胎生期に造血幹細胞移植を行うことで,野生型ブタに類似した.これらの結果は,X-SCID患者の生体内での免疫・微生物・代謝機能を正しく理解するだけでなく,胎生期造血幹細胞移植という,X-SCID患者に対する新たな治療概念を構築するための重要な情報をもたらすものであった.
