一般社団法人日本家政学会第74回大会

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2022年5月27日〜5月29日オンライン開催
一般社団法人日本家政学会大会
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2022年5月27日〜5月29日オンライン開催

[3F-02]分子間架橋によって推定される再生セルロースの基本構造

〇奥川 あかり1、湯口 宜明1、山根 千弘2(1.大阪電通大、2.神戸女大)

キーワード:

再生繊維、セルロース、架橋

目的 低炭素社会の構築には石油系プラスチックに代わる生分解性エコマテリアルの開発が期待され,その候補の一つに再生セルロースがある.これには再生セルロースの基本構造を理解する必要がある.古くはHermans等によってプレーンラティス構造やラメラ平面と称される分子シートが再生セルロースの基本構造とされてきた.最近では分子動力学計算や高輝度放射光でもその存在が示唆されている.本研究では再生セルロース繊維の分子間架橋による挙動から分子シート(基本構造)の存在を推測する.
方法 再生セルロース繊維(キュプラとリヨセル)を架橋し,小角・広角X線回折測定と織物の摩耗試験,染色実験を実施した.
結果 
繊維に摩擦を加えると(110)と(020)結晶面のX線回折強度の変化はわずかであるのに対し(1-10)面では2割以上も低下した.これは(1-10)面が摩擦によりシート状にへき開することで説明できる.(1-10)面から切り出した分子シートが内部構造として存在すると仮定すると(1-10)面上には水酸基が特異的に突き出ているので架橋処理によりへき開が抑制されることが想定される.実際,架橋織物では(1-10)面の回折強度の低下はほとんどなかった.この分子シートの存在は架橋前後の,小角X線散乱から求めた水による内部膨潤や染色挙動を合理的に説明できる.すなわち再生セルロースの基本構造は(1-10)面に由来するシート状構造の可能性がある.