[3F-04]磁石による展示方法が劣化した文化財染織品に及ぼす影響
〇濱田 仁美1、上村 加奈1、田中 優子1、原 乃々瀬1、加藤 雅人2(1.東京家政大、2.東文研)
キーワード:
磁石、染織品、展示方法、文化財、劣化
目的 文化財の染織品を博物館などで展示する際、近年、磁石で固定することが多くなってきた。しかし、この展示方法による染織品への影響は客観的に評価されていない。そこで本研究では、劣化した染織品を用いて、磁石貼付・付け外しによる外観及び物性の変化を調査する。磁石を用いた展示方法の影響を明確化し、より良い展示方法を提案することを目的とする。
方法 試料は、湿熱処理(80℃、65%)を20週間施して劣化させた絹布(羽二重)と苧麻布(ブロード)、及び1900~1945年頃に制作された絹縮緬の帯と着物(東京家政大学博物館より移譲)を使用した。磁石貼付は、10回付け外し及び2週間連続貼付等の実験を行った。磁石貼付前後の外観変化を顕微鏡で観察し、圧縮特性、通気性の測定から布構造の変化を考察した。
結果 湿熱処理を施した絹布(羽二重)は、磁石を一定期間貼付すると通気性が低下し、糸がつぶれて回復しないことが分かった。長期間の磁石貼付は強い圧縮力により、布をつぶしたまま回復せず形状変化させる可能性がある。また、鉄媒染の絹縮緬は、無撚糸のたて糸が磁石を取り外す時のせん断力により切断される現象が見られた。磁石付け外しは、磁石を外すときのせん断力が強いと、生地をゆがませ、条件によっては生地を破断する可能性もあることが分かった。今後、磁石の磁力や大きさ、付け外し方を検討し、より負担の少ない展示方法を検討していくことが重要と考える。
方法 試料は、湿熱処理(80℃、65%)を20週間施して劣化させた絹布(羽二重)と苧麻布(ブロード)、及び1900~1945年頃に制作された絹縮緬の帯と着物(東京家政大学博物館より移譲)を使用した。磁石貼付は、10回付け外し及び2週間連続貼付等の実験を行った。磁石貼付前後の外観変化を顕微鏡で観察し、圧縮特性、通気性の測定から布構造の変化を考察した。
結果 湿熱処理を施した絹布(羽二重)は、磁石を一定期間貼付すると通気性が低下し、糸がつぶれて回復しないことが分かった。長期間の磁石貼付は強い圧縮力により、布をつぶしたまま回復せず形状変化させる可能性がある。また、鉄媒染の絹縮緬は、無撚糸のたて糸が磁石を取り外す時のせん断力により切断される現象が見られた。磁石付け外しは、磁石を外すときのせん断力が強いと、生地をゆがませ、条件によっては生地を破断する可能性もあることが分かった。今後、磁石の磁力や大きさ、付け外し方を検討し、より負担の少ない展示方法を検討していくことが重要と考える。