[3F-05]近代の着物地に使われた無機顔料の分析
〇古濱 裕樹1、谷田貝 麻美子2(1.武庫川女大、2.千葉大)
キーワード:
染織品、顔料、蛍光X線分析
<目的>染織品の無機顔料は酸・アルカリ堅牢度に特徴を持つ。また,過去に毒性が危惧される顔料も使われた。無機顔料の使用実態の把握は、染織品の技法の解明や適切な管理にも繋がる。江戸末期から昭和初期の近代日本の着物地を分析し無機顔料の使われ方を調査する。
<方法>着物地の制作年代は柄や素材の特徴から推定した。着物地の色と蛍光X線元素分析の検出元素から無機顔料を推定した。可視マイクロスコープを用い,色素の繊維への浸透具合によって顔料であることを確認した。赤外マイクロスコープで850nm光の吸収の有無を観察し,色素の推定に供した。
<結果>青色のプルシアンブルーは,色みは藍との区別が容易ではないが,赤外マイクロスコープにより区別することができた。藍は地色など大面積でも使われたのに対し,プルシアンブルーは細線や小面積の柄に多く使われた。黄色,茶色の顔料は,鉄系のものが多く,赤外マイクロスコープによって有機色素と区別できた。茶色にはヒ素を含むものもあった。黄色からはクロム・鉛化合物も見出された。赤色の顔料は,鉄系のもの以外に水銀やクロム・鉛化合物などが見出された。白色顔料,体質顔料では,カルシウムや亜鉛が検出された。黒色の墨も赤外マイクロスコープで有機色素の黒と区別できた。鉄系顔料などを含む染織品の洗浄や保管では酸やアルカリの暴露に注意が必要で,ヒ素などを含む染織品は健康被害を発生させない取り扱いや保管が必要である。
<方法>着物地の制作年代は柄や素材の特徴から推定した。着物地の色と蛍光X線元素分析の検出元素から無機顔料を推定した。可視マイクロスコープを用い,色素の繊維への浸透具合によって顔料であることを確認した。赤外マイクロスコープで850nm光の吸収の有無を観察し,色素の推定に供した。
<結果>青色のプルシアンブルーは,色みは藍との区別が容易ではないが,赤外マイクロスコープにより区別することができた。藍は地色など大面積でも使われたのに対し,プルシアンブルーは細線や小面積の柄に多く使われた。黄色,茶色の顔料は,鉄系のものが多く,赤外マイクロスコープによって有機色素と区別できた。茶色にはヒ素を含むものもあった。黄色からはクロム・鉛化合物も見出された。赤色の顔料は,鉄系のもの以外に水銀やクロム・鉛化合物などが見出された。白色顔料,体質顔料では,カルシウムや亜鉛が検出された。黒色の墨も赤外マイクロスコープで有機色素の黒と区別できた。鉄系顔料などを含む染織品の洗浄や保管では酸やアルカリの暴露に注意が必要で,ヒ素などを含む染織品は健康被害を発生させない取り扱いや保管が必要である。