一般社団法人日本家政学会第74回大会

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2022年5月27日〜5月29日オンライン開催
一般社団法人日本家政学会大会
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[3G-03]戦争孤児の処遇と児童養護について考える『愛児の家・史料』から読み解く児童福祉の分岐点

〇佐々木 剛1、草野 篤子2(1.星槎大学、2.白梅学園大学)

キーワード:

児童福祉、第二次世界大戦、戦争孤児、児童養護施設、歴史を語り継ぐ

【目的】 本研究は、第二次世界大戦後の戦争孤児処遇とその後の児童養護について、2020年刊行の『愛児の家・史料』によって、児童福祉と世代間交流の視点から再検討を行う。
【方法】『愛児の家・史料』に掲載された記録を児童養護制度が変遷した時代背景から分析・再検討をする。また、このことにより歴史を語り継ぐことの必要性を世代間交流研究の視点から考察する。
【結果】 掲載された養護対象児童は引き取りや行方不明者が複雑に絡んでいるため正確な数は不明だが287名記録されていた。その内、重複する記録者を除くと判読出来る児童数は262名であった。この保護児童も、当初の戦争孤児から家庭事情による保護へと、昭和20年代後半から変化が生じていることが記録から読み取れる。
【考察】 戦争孤児の処遇は、明治期の日清・日露戦争以降の廃兵遺家族援護事業として国策によって行われたとの記録がある。しかし、第二次世界大戦後の処遇は明治期の対応には追いつかない数であった。筆者らは、これまで東京都養育院史の調査を通してこの戦争孤児の処遇を論じてきた。『愛児の家・史料』は、養育院処遇問題を含めて、戦後日本の児童養護に関する貴重な記録と言える。戦後処理の中で生じた児童の体験は、生々しさ故に、体験者によっては、思い出したくもない出来事とされてきた。『愛児の家・史料』から読み取れる内容は、負の遺産の伝承としての世代間交流研究にも、一定の示唆を与える。