講演情報
[I-CPD1-2]大動脈縮窄に対する外科治療
○小田 晋一郎 (京都府立医科大学大学院 医学研究科 心臓血管外科学)
キーワード:
大動脈縮窄、大動脈弓再建、カテーテル治療
大動脈縮窄、大動脈弓低形成、大動脈離断に対する外科治療は、長らく標準治療とされてきた。再建術の目標は、再狭窄の予防、大動脈による肺動脈や気管支の圧迫回避、反回神経麻痺の防止である。当科では、aortic arch advancement(上行大動脈と下行大動脈のend-to-side吻合)や、自己肺動脈壁を小弯側パッチとして用いた再建法、さらには自己肺動脈壁によるロール形成を行う弓部再建法などを施行している。これらは弓部形態、動脈管の長さ、上行・下行大動脈間距離、再建後の大動脈-肺動脈間距離などを考慮して選択されており、再建形態の最適化を目指した工夫が求められる。今回、それぞれの術式について術前後の形態および実際の再建法を提示し、再狭窄や周囲構造への影響を回避する上での工夫について述べる。一方、大動脈縮窄に対するカテーテル治療の報告も近年増加しており、特に低出生体重児や重篤な併存疾患を有する症例では、外科治療を行う前段階としてbridge的に位置付けられることが多い。バルーン血管形成術やステント留置は、個々の病態やリスクに応じた柔軟な治療戦略の一部として注目されている。術後の残存狭窄や再狭窄に対してもカテーテル治療が行われることはあるが、これらの狭窄は単純な膜状狭窄ではなく瘢痕性線維化を主体とすることが多く、バルーンでは十分な拡張効果が得られない場合がある。そのような場合には、再建部の切開と拡大を行うパッチ拡大術、病変部を切除して人工血管による置換術を行う方法、あるいは高度な癒着や再建困難な場合にextra-anatomical bypassによって血流を確保する方法など、状況に応じた外科的再介入が必要となる。今回、外科の立場から再建術の実際とその成績を提示し、未手術・術後大動脈縮窄に対するカテーテル治療の適応や将来的な展望を考える上での基盤となる情報を提供する。