講演情報

[I-CPD2-1]18トリソミーにおけるエビデンスベイストメジシン:病状に合わせた最適な医療を全国で!

古庄 知己1,2,3 (1.信州大学 医学部 遺伝医学教室, 2.信州大学 医学部附属病院 遺伝子医療研究センター, 3.長野県立こども病院 遺伝科)
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キーワード:

18トリソミー症候群、エビデンス、積極的治療

18トリソミー症候群(T18)は、2000年頃までは、生命予後不良(1年生存率5-10%)および生存児の重度発達遅滞から、国内外において制限的・緩和的医療が主流であった。その後、北米では患者会の自然歴調査(1994)や新生児医療における親の意思を尊重する潮流を背景に、こどもの病状や親の心情を考慮し、個別に対応する方向に変化した。日本では、「重篤な疾患を持つ新生児の家族と医療スタッフの話し合いのガイドライン」(2004)の発表により、こどもの最善の利益のために親と医療スタッフが対等に話し合うことの重要性が示され、こどもの生命予後・生活の質を向上させるための様々な選択肢が検討されるようになった。こうした中、日本の新生児・小児医療現場からは積極的治療の有用性に関する地道な調査結果が発信されてきた。標準的新生児集中治療により1年生存率が25%(長野県立こども病院、2006)-59.3%(兵庫県立こども病院、2022)に向上する。食道閉鎖に対する根治術により1年生存率27%(長野県立こども病院/愛知県医療療育総合センター中央病院、2013)-78%(兵庫県立こども病院、2024)に向上する。90%程度に合併する先天性心疾患は生命予後を規定する最も重要な合併症であるが、手術介入に関する有用性に関する報告が積み重ねられ(日本赤十字社医療センター、2008;日本小児循環器学会、2011)、米国胸部外科学会による単純型の先天性心疾患に対する心臓手術は妥当な選択肢であることなどを明示した歴史的な“推奨”(2024)に貢献、本年には大阪医科薬科大学病院より術後推定5年生存率79.5%という決定的な報告が行われた。本年1月、長野県立こども病院が根治手術を含めた積極的治療を行っていく方針に転換したことが報道された。エビデンスに基づき病状に合わせた最適な医療を全国で展開していくことが求められている。