講演情報

[I-CPD2-5]18トリソミー児に対する内科的管理と家族支援

豊島 勝昭 (神奈川県立こども医療センター 新生児科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

出生前診断、18トリソミー、胎児診断

生殖医療・非侵襲性出生前遺伝学的検査(NIPT)・胎児エコー検査の普及により、18トリソミーの胎児診断は増加している。
当院入院の9割は胎児診断例である。18トリソミー児の出産と診療に関わる複数診療科のチームで胎児診断と病状説明を行い、当院では過去の患者家族の要望を踏まえて内科的治療を中心とした緩和的な診療を行なってきたこと、長期的な生活や支援に関する情報、国内外の他施設の診療状況などを患者家族に説明してきた。当院での出産を希望される場合には、児の状況と家族の希望に応じたアドバンスド・ケア・プランニングで、各家族が望む出産や診療の実現に向け、医療チームとしての支援を目指してきた。
2015-2019年8月で外科疾患や在胎30週未満の早産児を除く18トリソミー児(34例)では退院率41%、生存日数中央値38日であった。2019年9月-2024年(36例)には、個室NICU病床での家族同室ケアを導入し、pHを維持した高二酸化炭素血症を許容しつつ、NT-proBNPを参考に利尿薬を開始・調整している。心臓手術・在宅呼吸デバイス・気管切開を行わず、退院率は75%に上昇(p=0.004)、生存日数の中央値は140日に延長した(p=0.01)。
現在、手術による生命予後改善の情報が増え、出産や出生後の診療に関する患者家族の希望は多様化している。その中で、県内外から当院での出産希望も存在し、家族同室の内科的管理と緩和的診療も、選択肢の一つとして位置づけられると考える。誕生を家族同室で喜び、時間を共に過ごす中で、家族の医療に対する希望が変化していくことも経験した。
NIPTを契機とした妊娠中絶の選択、出生後の外科治療に加えて、内科的管理・緩和的な診療と家族支援に関する情報も提供し、18トリソミー児とその家族が「ともに過ごす時間」を主体的に選択できるような意思決定の支援と内科的・外科的治療・家族支援の質向上を目指していきたい。