講演情報
[I-OR03-02]先天性心疾患における循環血液量と中心静脈圧の関係~フォンタン循環への応用の可能性~
○齋木 宏文, 松尾 悠, 工藤 諒, 西村 和佳乃, 齋藤 寛治, 佐藤 啓, 滝沢 友里恵, 桑田 聖子, 中野 智 (岩手医科大学 小児科学講座 小児循環器分野)
キーワード:
フォンタン、循環血液量、血管機能
背景:高い中心静脈圧は心不全における末梢臓器障害の原因と考えられ、Fontan症例では重要な予後規定因子である。一方、中心静脈圧はダイナミックに変化し、個々の循環特性の違いや条件により一律の評価が難しい。中心静脈圧と循環血漿量(CVP-PV)の関係は先天性心疾患の循環特性を反映するという仮説を検証した。方法:心臓カテーテル検査中に循環血液量を測定した非Fontan症例94例とFontan症例85例を対象とし、CVP-PV関係と循環指標の関連を解析した。結果:Fontan症例は非Fontan症例よりもCVPが高い(9.5±1.7, 6.1±1.6 mmHg, p<0.001)が循環血漿量は少なく(68.5±20.2, 79.0±24.6 ml/kg, p=0.0036)、硬い脈管系特性が示唆された(PV/CVP比 5.7±1.9, 12.6±7.0 ml/kg/mmHg)。非Fontan循環においてFontan循環の95%tileよりもPV/CVPが高い症例(柔らかい)と低い症例(硬い)で比較すると、PV/CVP比が高い症例は心拍出量(3.4±0.9, 2.9±0.8 mmHg, p=0.038)が高く、肺動脈圧(16.8±7.6, 22.4±8.5 mmHg, p=0.026)、心室拡張末期圧(RV 7.4±2.1, 11.2±3.6 mmHg, LV 9.2±2.0, 11.9±2.3 mmHg, 共にp<0.001 )が低かった。また血清アルドステロン値(111±95, 167±232 mmHg, p=0.08)が低い傾向を認めたが、血漿BNP値には差が無かった。以上から非Fontan循環においてPV/CVPが高い症例は循環予備能が高い症例であると考えられた。更にFontan症例においてPV、CVPをそれぞれ中央値で4群に分けFontan関連合併症の頻度を解析すると、肝硬変、蛋白漏出性胃腸症、臨床的心不全はPV/CVPが低い症例に最も頻度が高く、PV/CVPが高い症例では認めなかった。結論:PV/CVPは循環不全の代償としての硬い静脈系との関連が示唆され、Fontan循環の予後推定に有用な可能性がある。