講演情報
[I-OR03-04]小児心疾患における前負荷動員一回仕事量と心血管カップリングの単一心拍推定法変法
○犬塚 亮1, 増谷 聡2, 岩本 洋一2, 石戸 博隆2, 先崎 秀明3 (1.東京大学小児科, 2.埼玉医科大学総合医療センター小児科, 3.日本医療科学大学総合小児地域医療学)
キーワード:
心収縮能、カップリング、単一心拍推定法
【背景】前負荷動員一回仕事量 (PRSW)は、収縮末期エラスタンスよりさらに負荷依存性が低く、再現性も高い心収縮能の指標だが、負荷を変えながらの複数心拍での計測が必要なことにより臨床応用が限られている。我々はPRSWとその血管とのカップリングを単一心拍から推定する新たな方法を考案し小児心疾患患者での有用性を報告した。今回、大動脈の血流波形と圧波形からこれらを求める変法を考案したので報告する。【方法】2012年から2014年に心臓カテーテル検査を行った23名(女性11名)の小児患者において体心室の圧断面積同時計測を行った。下大静脈閉塞中のPRSW関係の傾き(Msw)とX軸との交点(Asw)を実測した。単一心拍法では、まずベースライン心拍の拡張期・収縮期心室断面積、及び大動脈の血流・圧波形から収縮期の圧断面積曲線を再現し(変法部分)、その圧断面積曲線から収縮末期圧断面積曲線を推定し、収縮末期断面積がAswの時の収縮末期圧としてMswを求めた。後負荷とのカップリングはMswを平均駆出圧で除して求めた。【結果】患者は6.8±4.5歳、先天性心疾患18名(未修復1名、二心室修復術後5名、グレン術後3名、フォンタン術後9名)、肺動脈性肺高血圧症1名、川崎病後4名であった。下大静脈閉塞で求めたMswは中央値61(IQR: 57-68)mmHg、ドブタミン投与後中央値84(IQR: 76-101)mmHgと増加した(n=14, p=0.015)。新たに考案した単一心拍法で求めたMswは実測のMswと強く相関し(r=0.95, p<0.0001)、ドブタミン投与前後の変化を有意に検出できた(n=14, p=0.03)。心室血管カップリングの推定値も実測値と有意な相関を認めた(r=0.75, p<0.0001)。【結論】我々の単一心拍法では、大動脈の血流波形と圧波形からも高精度にPRSWを推定できた。大動脈の圧波形や血流波形は心室の圧容積の同時計測より簡便に計測できる可能性があり、今後の臨床応用に有用である可能性がある。