講演情報

[I-OR05-05]心室中隔欠損症、肺動脈閉鎖症および主要大動脈肺動脈側副血管における肺高血圧症治療の適用に関する系統的レビュー

廣野 恵一1, 内田 敬子2, 永井 礼子3, 細川 奨4, 石井 卓5, 高月 晋一6, 石田 秀和7, 山岸 敬幸8, 土井 庄三郎5, 小垣 滋豊9 (1.富山大学 附属病院 小児科, 2.東京医科大学 細胞生理学, 3.北海道大学 医学部 小児科, 4.武蔵野赤十字病院 小児科, 5.東京科学大学 医学部 小児科, 6.東邦大学医療センター大森病院 小児科, 7.大阪大学大学院医学系研究科 小児科, 8.東京都立小児総合医療センター, 9.大阪急性期・総合医療センター 小児科)
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キーワード:

肺高血圧、区域性肺高血圧、主要大動脈肺動脈側副血管

【背景】肺動脈閉鎖(PA)、心室中隔欠損(VSD)、および大動脈肺側副動脈(MAPCA)を伴う先天性心疾患は、肺血流異常や血管リモデリングを引き起こし、低酸素血症や心不全を招く重篤な疾患である。特に術後も区域性肺高血圧(PH)が持続する症例があり、その治療戦略は確立されていない。本研究は、PH治療の有効性を検討することを目的とした。
【方法】PubMed、MEDLINE、Cochrane Library、医中誌Webを用いて2023年5月までの関連文献を検索した。対象は、PA/VSD/MAPCAと診断され、PH治療を受けた症例を含む研究とし、バイアスリスクを評価し、定性的統合を行った。
【結果】86件の文献の中から、1件のコホート研究と5件の症例報告の合計6件が本レビューに含まれ、合計22人の患者が対象となった。最も一般的に使用された薬剤はシルデナフィル(14例)またはボセンタン(12例)であり、ほとんどの患者(16例)は単剤療法を受けた。臨床転帰は患者により様々で、肺血管抵抗の改善(対象8例中8例)、酸素飽和度の改善(対象19例中8例)、および症状の改善(対象20例中18例)が認められた。しかし、副作用が5例報告され、そのうち2例では治療中止に至った。全体として、この集団におけるPH治療薬の使用を支持するエビデンスは、対象患者数が少なく観察研究に基づいているため限定的であった。
【考察】PA/VSD/MAPCA患者におけるPH治療は一定の臨床的利益をもたらす可能性があるが、その有効性を支持するエビデンスは依然として限定的であった。対象患者の解剖学的・病態生理学的な不均一性が治療効果のバラツキを生じさせる要因と考えられた。
【結語】 本レビューの結果、PA/VSD/MAPCA患者におけるPH治療の有効性に関する明確な結論を導くには、更なる大規模研究が必要である。