講演情報

[I-OR08-01]大動脈縮窄症の遠隔期高血圧は運動負荷テストで予測できるか

中嶌 八隅, 宮崎 文, 井上 奈緒 (聖隷浜松病院 小児循環器科)
PDFダウンロードPDFダウンロード

キーワード:

大動脈縮窄症、遠隔期高血圧、運動負荷テスト

【はじめに】高血圧(HT)は大動脈縮窄症(CoA)の主要な遠隔期合併症で、その前段階の運動時高血圧も知られている。これらは大動脈の有意な狭窄がなくても見られる事があり、予測因子も確実なものがない。今回我々は運動負荷検査からCoA遠隔期の高血圧発症を予測できないか検討した。
【方法】対象は当院通院中のCoA・離断症で、安静時上下肢血圧差が20mmHg以下でトレッドミル検査(TMET)を実施した症例。フォンタン術後は除外した。病歴からHTの有無、内服薬を調査した。TMETで負荷前と終了直後に上下肢血圧を測定した。負荷中収縮期血圧200mmHg以上を運動時HTとした。HT・運動時HTを高血圧合併(HT)群とし、HT合併以前のTMET結果(運動負荷前後の上/下肢血圧、上下肢血圧差の変化)について非合併(NT)群と比較検討し、各パラメーターでROC曲線からcut off値を検討した。
【結果】症例は42名(大動脈縮窄症39名、大動脈離断症3名)だった。経過観察期間は19年(6-47年)で、HTは1名、運動時HTは10名に見られた。HT診断年齢は17歳(9-24歳)だった。ACE 阻害剤はHT群で1名、NT群で3名投与していた。負荷前の上肢・下肢血圧が共にHT群で高値(上肢NT/HT 108±10mmHg vs. 121±9mmHg, p<0.001, 下肢NT/HT 112±15mmHg vs. 126±14mmHg, p<0.001)だった。負荷後上下肢圧差は両群とも拡大したが、HT群が有意に拡大した(NT/HT 37±19mmHg vs. 49±34mmHg, p<0.001)。その他、負荷後上肢・下肢血圧、負荷前後の上肢の血圧変化もHT群で有意に高値だった。ROC曲線でのAUCが高い指標は安静時上肢・下肢血圧、負荷後上下肢血圧差で、cut off値は安静時上肢血圧110.7mmHg(感度0.78、特異度0.69)、安静時下肢血圧115.7mmHg(感度0.71、特異度0.8)、負荷後上下肢血圧差34.6mmHg(感度0.79、特異度0.69)だった。
【結語】安静時血圧が高め、運動後に上下肢圧差が増大する症例は大動脈の有意狭窄がなくても将来高血圧を合併するリスクがある。