講演情報

[I-OR08-04]不可逆的びまん性肺動静脈瘻への患側肺動脈血流制限

森 秀洋, 金 成海, 渋谷 茜, 眞田 和哉, 石垣 瑞彦, 佐藤 慶介, 芳本 潤, 満下 紀恵, 新居 正基, 田中 靖彦 (静岡県立こども病院 循環器科)
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キーワード:

肺動静脈瘻、肺動脈絞扼術、左側相同

【背景】下大静脈欠損-奇静脈吻合を伴うGlenn/Fontan術後, 門脈体循環シャント(PSS)のある患者ではびまん性肺動静脈瘻(PAVF)を合併することがある. 肝静脈血流の肺循環への分布不全が主因とされ, 早期に介入することで改善が得られる一方, 発生から数年以上経つと不可逆的で,低酸素血症および高心拍出性心不全が問題となることがある. 【目的及び対象】2016年1月から2025年1月の9年間に当施設で重度低酸素血症を伴うびまん性PAVFに対して患側PAの血流制限を行なった5例について後方視的に検討した.【結果】患者の治療時年齢の中央値は10.6歳(10.1-27.1歳)で5例中4例は左側心房相同(LAI)であった. 残りの1例とLAIの1例の計2例はPSSを伴っていた. LAIの4例は単心室修復例で,うち3例はFontanに到達していた.介入したPAVFは左に3例,右に2例認められ,肝血流分布是正のため,2例は肝静脈-肺動脈導管のサイズアップおよびre-routingを施行,1例は2心室修復に変更となった. それでも不可逆的であった4例は外科的に患側PAのbandingを行い, 残りの1例はカバードステントを用いて患側PAのisolationを行なった. 4例はSpO2が改善し, うち3例はHOTを減量することができた一方, 1例は不変であった. 単心室修復例のうちデータのある2例に関してCVPは治療前14-16mmHg, 治療後9-13mmHgと増悪を認めなかった. いずれの症例も介入に関連する合併症は認めなかったが, 1例が術後8か月でPA banding部が離開し,再度低酸素血症が増悪したため患側PAをAVP-IIで塞栓した. しかし,その麻酔導入時に急変し, ECMO導入となり, 術後多発脳出血を認め死亡に至った.【考察】重度PAVFに対し患側PAの血流制限は合併症なく, 重篤な症状を改善し, 救命につなげる唯一の方法となる可能性がある.